SPH法について


Smoothed Particle Hydrodynamics (平滑化粒子流体力学) 

 

 粒子法の一つであるSPH(Smoothed Particle Hydrodynamics)法は天体物理のシミュレーションを行う手法として1977年にLucyにより提案され、天体物理学の分野で発展したシミュレーション手法です。現在では粘性流体、電磁流体など幅広い分野で用いられています。

 SPH法では連続体を粒子の集合として考え、個々の粒子の状態は支配方程式によって決定されます。非圧縮性流体の支配方程式をラグランジュ形式で記述すると以下のように表されます。

SPH_eq1-2

ここで、v 、ρ、 P 、μ及びfはそれぞれ流速、密度、圧力、粘性係数、外力です。

 SPH法において位置rでの物理量A(r)は、

SPH_eq3

物理量の勾配、及びラプラシアンはそれぞれ、

SPH_eq4-5

 

と表されます。ここでm、W、hはそれぞれ質量、カーネル関数、カーネルの影響半径(平滑距離)です。カーネル関数は位置rから近傍粒子までの距離と影響半径の関数で、距離が離れるにつれ減少し、影響半径外で0になるような関数がよく用いられます。

 粒子iの密度は、式(3)より以下のように表されます。

SPH_eq6

また、式(2) の運動方程式をSPH法で離散化すると、圧力勾配項、粘性項はそれぞれ以下のように表されます。

SPH_eq7-8

式(7)の圧力Pは理想気体の状態方程式より以下のように表されます。

SPH_eq9

ここでk、ρ0はそれぞれ気体定数、基準密度です。
つまり式(7)、(9)より、粒子は密度がρ0になる方向へ運動します。

式(2)、(7)、(8)より粒子iの加速度は、

SPH_eq10

と表されます。式(6)、(9)、(10)を用いて各時刻での密度、圧力、加速度を求め、時々刻々の粒子の運動を追跡します。

 

参考文献
(1) M. Müller, D. Charypar, M. Gross, Particle-Based Fluid Simulation for Interactive Applications, in Proceedings of ACM SIGGRAPH Symposium on Computer Animation 2003, pp 154-159.