押出ブロー成形で肉厚がばらつく。次にどの条件を試す?肉厚分布と成形条件の比べ方

押出ブロー成形品を測定すると、同じ製品でも場所によって肉厚が違うことがあります。

たとえば、製品の0°側で、上部1.15 mm、中央部0.76 mm、下部1.10 mmという測定結果を考えます。中央部が上部や下部より薄いことは分かります。次にどの成形条件を変えるかを考えるため、位置ごとの肉厚と、測定した製品を成形したときの条件を同じ試行の記録にまとめます。

押出ブロー成形では、ダイから押し出す筒状の溶融樹脂であるパリソンの形状が、成形後の製品肉厚分布に影響します。成島は、スウェル(ダイを出た樹脂が膨らむ現象)とドローダウン(自重などでパリソンが伸びる現象)を考慮してパリソン形状を計算しています。その計算結果を使って、成形後の製品肉厚分布を予測しています。[1]

結論

先に答え

肉厚がばらついたら、最初に何をする?製品の測定位置を決め、位置ごとの肉厚と、測定した製品を成形したときの条件を同じ試行の記録にまとめます。

肉厚が薄かったという結果に加えて、どの位置が何mmだったかも残します。成形条件を変更した後も同じ位置を測れば、肉厚分布が変更前後でどう変わったのかを比較できます。

以降の数値は、比較方法を説明するために設定した値です。 A〜Dは実施済みの試行を想定した例、E〜Gはまだ試していない条件候補を想定した例として扱います。

01

測定位置を決める

肉厚がばらついたとき、最初に何を確認するか

製品の測定位置を決めます。

例として、高さ方向を上部、中央部、下部に分け、さらに同じ高さで0°側と180°側を測ります。 0°は製品上で決めた基準方向とし、成形条件変更後も同じ基準方向を使います。 実際の測定位置は、製品形状や検査方法に応じて決めます。 最小肉厚は、あらかじめ決めた測定位置の中で最も小さい値として扱います。

表1 試行Aの測定位置と肉厚:上部、中央部、下部と、同じ高さの周方向を固定して記録する例です。

試行肉厚結果
試行 上部 0° 上部 180° 中央部 0° 中央部 180° 下部 0° 下部 180° 最小肉厚
A 1.15 mm 1.08 mm 0.76 mm 1.02 mm 1.10 mm 1.06 mm 0.76 mm

この測定結果を試行Aと呼びます。 最も薄い場所は中央部0°側の0.76 mmです。 同じ高さの180°側は1.02 mmで、中央部でも方向によって肉厚が違います。

最小肉厚0.76 mmに加えて、反対側や上下の肉厚も位置別に記録します。位置ごとの値があれば、成形条件変更後の中央部0°側の変化と、ほかの位置の肉厚変化を同じ基準で確認できます。

長手方向の肉厚分布と、同じ高さにおける周方向の偏りは分けて記録します。 分けておけば、成形条件変更後に長手方向と周方向がそれぞれどう変わったのかを確認しやすくなります。

測定位置を決めたら、変更後も同じ位置を同じ測定方法で測ります。 これで、どの条件を変えたときに製品のどの場所の肉厚がどう変わったかを比較できます。

02

条件と結果を同じ記録に

肉厚と成形条件を一つの記録にそろえる

位置ごとの肉厚を測ったら、位置別肉厚と、その製品を成形したときの条件を同じ試行の記録にまとめます。

中央部0°側が0.76 mmだった試行では、その0.76 mmと、パリソンプログラム、スクリュー回転数、押出時間、樹脂温度、ブロー圧力、ブロー時間を同じ行に記録します。

パリソンプログラムは、押出中にパリソンの肉厚を位置に応じて変えるための制御設定です。 具体的な設定方法や名称は装置によって異なります。

厚生労働省の技能検定資料では、押出ブロー成形の知識として複数の項目が挙げられています。 たとえば、樹脂温度、スクリュー回転数、パリソンの肉厚制御(パリソンコントロール)、ブロー時間、ブロー圧力です。 不良項目には、偏肉(位置による肉厚の偏り)や肉厚不足も含まれます。[2]

この資料からは、押出ブロー成形で扱う設定項目と不良項目を確認できます。どの条件から調整するかは、現在の肉厚分布と成形条件の記録を比較して判断します。

記録では、成形条件、結果、識別情報を分けておくと比較しやすくなります。

  • 成形条件:パリソンプログラム、スクリュー回転数、押出時間、樹脂温度、ブロー圧力、ブロー時間など
  • 結果:測定位置ごとの肉厚、最小肉厚、必要に応じて製品重量など
  • 識別情報:材料、製品、金型、ダイ、成形機、測定方法など

記録項目は、設備や製品に合わせて選びます。 使う設定値も装置によって異なります。試行ごとに、何を変え、何を同じにしたのかを記録します。

次の表では、試行Aを基準とし、試行BではパリソンプログラムだけをP1からP2へ変えています。 表にあるスクリュー回転数、樹脂温度、ブロー圧力、材料ロットはAとBで共通です。 表に示していない押出時間、ブロー時間、製品、金型、ダイ、成形機、測定方法も共通とします。 成形条件の具体値は設備や材料で変わるため、スクリュー回転数、樹脂温度、ブロー圧力は説明用の記号R1、T1、B1で表します。

表2 試行AとBの成形条件と結果:パリソンプログラムだけをP1からP2へ変え、比較に使うほかの条件をそろえた例です。

試行成形条件識別情報結果
試行 パリソン
プログラム
スクリュー
回転数
樹脂温度 ブロー
圧力
材料
ロット
中央部
中央部
180°
最小
肉厚
製品
重量
A P1 R1 T1 B1 L1 0.76 mm 1.02 mm 0.76 mm 100.2 g
B P2 R1 T1 B1 L1 0.88 mm 1.00 mm 0.88 mm 100.3 g

この例でAとBの間で変えた条件は、パリソンプログラムだけです。 中央部0°側ではAの0.76 mmとBの0.88 mmを、中央部180°側ではAの1.02 mmとBの1.00 mmを比較します。 製品重量はAの100.2 gとBの100.3 gを比べます。

AとBを比べると、パリソンプログラムをP1からP2へ変えたときに、位置別肉厚がどう変わったかを確認できます。 実際の押出ブロー成形では、材料、ダイ、運転条件など複数の要素が関係します。

Yousefiらは何を変え、何を測ったか

パリソンの径や肉厚は、スウェルとサグ(自重による垂れ下がり)に加え、ダイ形状、運転条件、樹脂特性によって変わります。Yousefiらは、こうした変化を実験と数値解析の両方で捉え、パリソン形成から最終成形品の肉厚分布・重量分布まで予測できるかを調べました。[3]

実験では3種類のHDPE(高密度ポリエチレン)を使い、2台の工業規模の間欠押出機で、ダイ形状、ダイギャップ(ダイ出口のすき間)、流量、樹脂、パリソンプログラムなどを変えています。パリソンの径や肉厚は、パリソンを区間ごとに挟んで寸法と重量分布を測るピンチオフモールド法で測定しました。測定結果は、スウェル、サグ、温度変化を考慮した有限要素解析(形状を小さな要素に分けて変形を計算する方法)の予測結果と比較しています。[3]

ダイギャップを1 mmから2 mmへ変えたときの結果

Yousefiらのパリソンプログラム実験では、ダイギャップを1 mmから2 mmへ広げた区間でも、パリソン肉厚はほぼ同じ値になり、肉厚方向のスウェルは約半分になりました。数値解析で求めたパリソン長は、多くの条件で実験値との差が5%未満でした。成形品の肉厚分布と重量分布についても、数値解析の予測値と実験値を比較しています。[3]

AとBで材料ロット、ダイ、製品、金型などの複数項目が異なる場合、どの違いが肉厚差に影響したのかを判断しにくくなります。パリソンプログラムの変更による肉厚差を見たい場合は、可能な範囲でほかの条件をそろえ、同じ測定位置でAとBを比べます。

複数の条件を同時に変える場合は、何を変えた比較なのかが一目で分かるように、条件の組み合わせを記録します。

03

分布を分けて見る

肉厚の違いをどう分けて見るか

成形条件と位置別肉厚をそろえたら、長手方向と周方向の肉厚分布を分け、製品重量も別の結果として確認します。

長手方向の肉厚分布

同じ0°側で、上部、中央部、下部を測定した結果を比べます。

表3 長手方向の肉厚分布:0°側の上部、中央部、下部を試行AとBで比較します。

測定位置肉厚結果
測定位置 試行A 試行B
上部 0° 1.15 mm 1.13 mm
中央部 0° 0.76 mm 0.88 mm
下部 0° 1.10 mm 1.08 mm

AからBへの差は、上部0°側が−0.02 mm、中央部0°側が+0.12 mm、下部0°側が−0.02 mmです。 この例では、中央部0°側の差が最も大きくなっています。

最小肉厚を見ると、Aの0.76 mmからBの0.88 mmへ0.12 mm増えています。位置別に並べると、その変化が上部、中央部、下部のどこで生じたのかまで確認できます。

中央部が薄くなった原因を調べるときは、ダイ、金型、パリソン形状、樹脂温度、ブロー条件などを追加で確認します。長手方向に分けて記録すると、AとBで上部、中央部、下部のどこが変わったかを先に確認できます。

周方向の偏肉

同じ高さでは、周方向の肉厚も比べます。 表4では、表1の0°側と180°側に90°側と270°側を加え、中央部を4方向で比較します。

表4 周方向の肉厚分布:中央部の0°、90°、180°、270°を試行AとBで比較します。

測定位置肉厚結果
測定位置 試行A 試行B
中央部 0° 0.76 mm 0.88 mm
中央部 90° 0.95 mm 0.96 mm
中央部 180° 1.02 mm 1.00 mm
中央部 270° 0.93 mm 0.94 mm

AからBへの差は、中央部0°側が+0.12 mm、90°側が+0.01 mm、180°側が−0.02 mm、270°側が+0.01 mmです。 この例では、0°側の差が最も大きくなっています。

同じ高さの各方向を並べると、周方向のどの位置で肉厚がどれだけ変わったのかを確認できます。

表4では、周方向のどの位置で肉厚がどれだけ変わったかを確認します。肉厚差が大きい位置について、AとBでダイや金型の条件、変更した成形条件、測定したパリソンの径・肉厚に違いがあったかを確認します。その記録を使って、肉厚差の原因を調べます。

製品重量も一緒に確認する

位置別肉厚に加えて製品重量も記録している場合は、重量を別の結果として確認します。

AとBの製品重量の差は0.1 gです。一方、中央部0°側は+0.12 mm、中央部180°側は−0.02 mm変わっています。表2のように、製品重量と各測定位置の肉厚をそれぞれ別の列に記録します。こうしておくと、製品全体の重量変化と、各位置の肉厚変化を分けて確認できます。

Yousefiらの研究でも、パリソン形成と最終成形品を評価する中で、製品の肉厚と重量分布が扱われています。[3]

04

パリソンも記録

必要に応じて、パリソンの径・長さ・肉厚も確認する

位置別肉厚と成形条件を同じ試行の記録にまとめたら、測定できる場合はブロー前のパリソンの径、長さ、肉厚も記録します。試行ごとにパリソンの径、長さ、肉厚と成形条件を一緒に残せば、成形条件を変えたときに各測定値がどう変わったかを比べられます。

押出ブロー成形では、ブローする前に、筒状の溶融樹脂であるパリソンをダイから押し出します。 パリソンは、ダイを出た後も径、長さ、肉厚が変化し得ます。

成島は、押出ブロー成形品の肉厚分布にはパリソンの押出形状が大きく関係し、押出過程ではスウェルとドローダウンが重要になると説明しています。[1]

成島は何を計算し、何と比べたか

成形品の肉厚分布が不均一になると、冷却後の引けや膨らみに加え、容器の座屈強度、把持強度、内圧に対する強度にも関わります。成島は、成形前に肉厚分布を予測するため、パリソン押出から型締め・吹込みまでを計算する方法を扱っています。[1]

報告ではHDPEを使い、まずスウェルとドローダウンを考慮してパリソン形状を計算し、続いて型締め・吹込み過程を有限要素法で計算しました。円形ダイ1条件と偏平ダイ2条件で実際に容器を成形し、容器の高さ方向に測った肉厚とシミュレーション結果を比較しています。[1]

実測肉厚との比較結果

円形ダイのCase 1と偏平率の小さいCase 2では、計算した肉厚分布と実測値がよく一致しました。偏平率がやや大きいCase 3では、計算値と実測値のずれが増えました。成島は、3条件全体について計算値と実測値がおおむね一致したと報告しています。[1]

成島の計算では、まずスウェルとドローダウンを考慮してパリソン形状を求め、その形状を使って最終製品の肉厚分布を計算しています。最終製品の肉厚だけでなく、ブロー前のパリソン形状も計算対象になっています。[1]

ダイスウェル

ダイを出た溶融樹脂が膨らむ現象をダイスウェルと呼びます。

パリソンは、ダイ出口を通過した後に径が膨らむことがあります。パリソンの肉厚を考えるときは、ダイギャップに加えて、ダイを出た後の変形も確認します。

Yousefiらの実験でも、ダイ形状、流量、樹脂などの違いによって、パリソンの径方向・肉厚方向のスウェルが変わることが確認されています。[3]

スウェル量は、材料のレオロジー(溶融樹脂の流れや変形の特性)、温度、ダイ、運転条件などによって変わります。 製品肉厚との関係を見るときは、スウェル量だけでなく、材料や温度などの条件も合わせて確認します。

パリソンの径や肉厚を測定できる場合は、ダイギャップなどの設定と、ダイを出た後に測ったパリソン径・肉厚を同じ試行の記録に残します。その記録を使って、成形条件の変更前後を比べます。

ドローダウン

押し出されたパリソンが、自重などの影響を受けて伸びる現象をドローダウンと呼びます。

先に押し出された部分ほど、金型が閉じるまでに長く垂下する場合があります。 材料の粘弾性的な性質や温度、押出時間などが異なれば、伸び方や肉厚分布も変わり得ます。

成島は、押出時のパリソン形状を考える際にスウェルとドローダウンの両方を扱っています。[1] Yousefiらも、スウェルとサグを考慮してパリソン形成を実験と数値解析で評価しています。[3]

スウェルとドローダウンは同時に起こり得ます。材料、樹脂温度、押出時間、ダイ条件などが変わると、パリソンの径、長さ、肉厚分布も変化する可能性があります。[1][3] スウェルやドローダウンを調べるときは、測定したパリソンの径・長さ・肉厚と、材料、樹脂温度、押出時間を試行ごとに確認します。最終製品の位置別肉厚も同じ試行で確認します。

パリソンの長さ、径、肉厚

試行AとBでパリソンの長さ、径、肉厚を測定できる場合は、パリソンプログラム、押出時間と一緒に試行ごとに記録します。パリソンの測定値と最終製品の位置別肉厚には、同じ成形品IDまたはショット番号を付けます。実際に測定する項目は、設備や測定方法に合わせて選びます。

同じ成形品IDまたはショット番号で記録しておけば、どの成形条件でパリソンの径・長さ・肉厚がどう変わり、最終製品の各測定位置が何mmになったのかを確認できます。

Tokunagaらは何を測り、何を予測したか

プラスチック燃料タンク用のパリソンは、6層・4種類の材料からなる多層構造です。層ごとに材料が異なり、粘弾性も一様ではないため、生産時のパリソン形状を数値計算で再現するには複雑な材料挙動を扱うことになります。Tokunagaらは、生産設備で測定したプロセスデータから計算に使う係数を求め、パリソン形状を数値シミュレーションで予測する方法を検討しました。[4]

研究では、パリソンのスウェル、ドローダウン、温度分布などを生産工程から取得し、数値シミュレーションに使う係数を求めています。パリソン全長と径は画像から測定し、肉厚分布はパリソンを切断して非接触レーザー変位計で測定しました。表面温度にはサーモカメラを使っています。まずダイコア位置を固定した条件の測定値から計算に使う係数を求め、その後、実際の燃料タンク成形に近いようにダイコア位置を変化させた条件で予測結果を検証しました。[4]

可変ストローク条件での検証結果

大きく速いストローク変化(ダイコア位置の大きく速い変化)の周辺を例外として、パリソンの径分布と肉厚分布は実測値に対して概ね±20%の範囲で予測されました。大きく速いストローク変化の周辺では予測誤差が増え、研究者らはその改善を今後の課題としています。この精度は、Tokunagaらが扱った材料、設備、条件に対する結果です。[4]

05

変更条件を決める

次に試す条件をどう決めるか

位置別肉厚と成形条件を同じ試行の記録にまとめ、必要に応じてパリソンの径・長さ・肉厚も記録したら、次の試行で何を変え、何を同じにするかを決めます。

肉厚分布には、材料、ダイ、運転条件など複数の要素が関わります。 次に試す条件は、現在の肉厚分布と成形条件の記録を見て、どの条件の影響を確認したいかに応じて選びます。 厚生労働省の技能検定範囲には複数の設定項目があり、Yousefiらの研究でもダイ形状、運転条件、樹脂特性など複数の要素が扱われています。[2][3]

試行Aを比較の基準にし、次の試行Bで何を変えるのかを明示します。 BではパリソンプログラムだけをP1からP2へ変更します。 表2にあるスクリュー回転数R1、樹脂温度T1、ブロー圧力B1、材料ロットL1は固定します。 表に示していない押出時間、ブロー時間、製品、金型、ダイ、成形機、測定方法もAと同じにします。

再測定では、中央部0°側のA 0.76 mmとB 0.88 mm、中央部180°側のA 1.02 mmとB 1.00 mmを比べます。最小肉厚はA 0.76 mmとB 0.88 mm、製品重量はA 100.2 gとB 100.3 gを比べます。AとBではパリソンプログラムだけをP1からP2へ変えています。そのため、P1→P2という設定差と各測定位置の肉厚差を同じ比較の中で確認できます。

AとBの比較では、中央部0°側が0.76 mmから0.88 mmへ、0.12 mm増えています。 この変化を望ましいと判断できるかは、ほかの測定位置の肉厚と対象製品の品質基準も合わせて確認します。

AとBで材料ロット、ダイ、樹脂温度、パリソンプログラムなど複数の条件が異なる場合、肉厚差には複数の条件変更が含まれます。 パリソンプログラムをP1からP2へ変えたときの肉厚変化を確認したい場合は、ほかの条件をそろえて比較します。 複数の条件を計画的に変える場合は、実験計画法などで条件の組み合わせを設計できます。

複数条件を扱う場合は、試行ごとに変更した条件の組み合わせと、その試行で測った同じ位置の肉厚・製品重量を同じ行に記録します。

次の試験条件を決めるときは、比較の基準、変更する条件、固定する条件、再測定する位置、比較する結果を明確にします。試行ごとに、変更条件、固定条件、測定位置、測定した肉厚・製品重量を同じ記録に残します。この記録から、どの条件を変えたときに製品のどの位置がどう変わったかを後から確認できます。

06

蓄積データを使う

条件と結果が増えると、表だけでは比べにくくなる

試行数が少ないうちは、AやBのような実施済みの試行を表で比較できます。

条件側の項目と結果側の項目が増えるほど、試行ごとに見比べる値も増えます。 たとえば、条件側にパリソンプログラム、スクリュー回転数、樹脂温度、ブロー圧力があり、結果側に複数位置の肉厚、最小肉厚、製品重量がある場合です。

次の表は、試行AとBにC、Dを加えた例です。 説明を追いやすくするため、条件列はパリソンプログラム、スクリュー回転数、樹脂温度、ブロー圧力の4項目に絞っています。

表5 試行A〜Dの条件と結果:試行が増えたときに、条件列と位置別肉厚、製品重量を同じ行で記録する例です。

試行成形条件結果
試行 パリソン
プログラム
スクリュー
回転数
樹脂温度 ブロー
圧力
上部0°
肉厚 (mm)
中央部0°
肉厚 (mm)
下部0°
肉厚 (mm)
最小
肉厚 (mm)
製品
重量 (g)
A P1 R1 T1 B1 1.15 0.76 1.10 0.76 100.2
B P2 R1 T1 B1 1.13 0.88 1.08 0.88 100.3
C P2 R2 T1 B1 1.09 0.91 1.05 0.91 102.1
D P3 R2 T2 B2 1.18 0.84 1.12 0.84 101.4

表5では、A〜Dを実施済みの試行として扱い、各行の肉厚と製品重量を測定済みの結果として比較します。P2、R1、T2、B1の組み合わせは未実施条件とし、中央部0°肉厚、最小肉厚、製品重量などを予測対象とします。

候補となる成形条件が増えた場合、すべてを実機で試す前に、これまでの実測データから各候補の肉厚や重量を見積もって比較する方法があります。

過去の実測データから、未実施条件の結果を予測する

これまでの試行には、「どの成形条件で」「どの肉厚・重量になったか」という組み合わせが残っています。機械学習を使うことで、こうした過去の実測データから、まだ試していない成形条件で肉厚や重量がどうなるかを予測することができます。

機械学習とは、過去の実測データから、どの成形条件のときに肉厚や重量がどうなるのか、その関係をコンピュータに学習させる方法です。

表5の例では、パリソンプログラム、スクリュー回転数、樹脂温度、ブロー圧力などが入力する成形条件です。上部0°肉厚、中央部0°肉厚、下部0°肉厚、最小肉厚、製品重量などが実際に測定した結果です。A〜Dの各行にある成形条件と実測結果を使って、条件と結果の関係を学習します。

機械学習で得られた関係を使い、まだ試していない成形条件を入力したときに、肉厚や重量の予測値を出力する仕組みを予測モデルと呼びます。

たとえば、未実施のP2、R1、T2、B1を予測モデルへ入力すると、中央部0°肉厚、最小肉厚、製品重量などの予測値を出力します。入力するのはP2、R1、T2、B1という成形条件です。予測する対象・項目(出力)は、入力した成形条件で得られる肉厚や重量です。

実測した条件と結果 → 機械学習で関係を学ぶ → 予測モデルを作る → 未実施条件の肉厚や重量を予測する

簡単に言うと、過去の「この条件で、この肉厚になった」という実測記録を使って、まだ試していない条件の肉厚や重量を見積もります。

Tokunagaらは、数値シミュレーションでパリソン形状を予測しました。[4] Huangらは、機械学習と最適化を組み合わせて、目標肉厚に近いパリソン肉厚分布を探索しています。[5]

目標とする製品肉厚を得るため、パリソン肉厚分布をどう決めたか

Huangらは、パリソン肉厚分布を試行錯誤だけで決めると時間と材料がかかり、作業者の経験にも左右されるという課題に対し、目標とする製品肉厚分布に近づくパリソン肉厚分布を探索する方法を検討しました。研究では特定のHDPEを対象に、まず有限要素法でパリソンの膨張を多数シミュレーションしました。[5]

次に、そのシミュレーション結果を使って、パリソン肉厚分布と、成形品の肉厚分布を評価する値との関係をニューラルネットワークに学習させました。ニューラルネットワークは、機械学習で使われる予測方法の一つです。この研究では、パリソン肉厚分布を入力側、成形品肉厚を評価する値を結果側として関係を学習しています。学習に使っていない別の有限要素解析結果でも、予測性能を確認しています。[5]

その後、遺伝的アルゴリズム(複数の候補を評価しながら候補を更新して探索する最適化手法)を使い、研究内で設定した目標肉厚に近づくパリソン肉厚分布を探索しています。[5]

予測と探索の結果

ニューラルネットワークの予測結果は有限要素解析の結果とよく一致しました。著者らは、有限要素法、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムを組み合わせました。その結果、目標とする成形品肉厚に近づくパリソン肉厚分布を探索できたと報告しています。[5]

Huangらが報告した探索結果は、特定のHDPE、製品形状、数値解析条件を対象としています。[5]

実際に過去の実測データから未実施条件を予測する場合、予測結果は、学習に使うデータの範囲や品質によって変わります。材料や金型、ダイ、測定方法が異なる場合は、その違いが分かるように記録しておきます。

未実施条件の肉厚や重量を予測して条件候補を比べた後は、実機で成形し、同じ位置を測定して確認します。

条件候補を比較

UIDCSで条件候補を比較する場合

これまでに実施した試行は、成形条件と測定結果を表で見比べられます。一方、まだ試していない成形条件は、実際に成形する前は測定結果がなく、結果は未確定です。試したい成形条件が増えるほど、実機で確認する回数も増えていきます。

シムロンでは、手元にある条件結果のデータから、欲しい結果に近い条件候補を探す作業を支援するため、UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)を開発しています。

欲しい結果から、条件を探す。

UIDCSは現在開発中です。 実験、製造、試験、CAE(コンピュータによる解析)などで得られた表形式の条件と結果のデータを使う設計です。 押出ブロー成形のデータなら、パリソンプログラム、スクリュー回転数、押出時間、樹脂温度、ブロー圧力、ブロー時間などを条件列とし、 位置別肉厚、最小肉厚、重量などは結果列として整理できます。

UIDCSでは、前節で説明した機械学習を使い、「どの成形条件で、どの肉厚・重量になったか」という関係を実測データから学習する設計です。その学習結果から予測モデルを作り、未実施条件を入力したときの肉厚や重量などを予測して、欲しい結果に近い条件候補を探します。

つまり、未実施条件の肉厚や重量を予測し、その予測値を中央部0°肉厚、最小肉厚、製品重量の目標値と比べます。その比較結果を見て、技術者が次に試す成形条件の候補を選びます。UIDCSは、未実施条件の結果予測と、予測値と目標値の比較を支援する設計です。

押出ブロー成形での条件候補比較の例

次の3つの目標値を設定します。

  • 中央部0°肉厚:0.90 mm以上
  • 最小肉厚:0.88 mm以上
  • 製品重量:101.5 g以下

上の3つは、条件候補の比較方法を説明するために設定した目標値です。

まだ試していない条件候補E、F、Gの予測結果を比べます。 表6も説明を追いやすくするため、条件列はパリソンプログラム、スクリュー回転数、樹脂温度、ブロー圧力の4項目に絞っています。

表6 条件候補E〜Gの予測結果:3つの目標値に対し、まだ試していない条件候補の予測結果を比較します。

候補成形条件予測結果
条件
候補
パリソン
プログラム
スクリュー
回転数
樹脂温度 ブロー
圧力
中央部0°肉厚
予測値
最小肉厚
予測値
重量
予測値
E P2 R1 T2 B1 0.90 mm 0.89 mm 100.8 g
F P3 R1 T1 B2 0.92 mm 0.87 mm 101.0 g
G P2 R2 T2 B1 0.94 mm 0.90 mm 103.2 g

表6のE、F、Gに示した肉厚と重量の予測値は、条件候補の比較方法を説明するために設定した値です。

Eの予測結果は、中央部0°肉厚0.90 mm以上、最小肉厚0.88 mm以上、重量101.5 g以下という3つの目標をすべて満たしています。 Fの予測結果では、中央部0°肉厚と重量は目標を満たしますが、最小肉厚0.87 mmは目標を下回ります。 Gの予測結果では、中央部0°肉厚と最小肉厚は目標を満たしますが、重量103.2 gは目標を上回ります。

E、F、Gそれぞれについて、中央部0°肉厚、最小肉厚、製品重量の予測値を目標値と比べます。実際の採用判断では、対象製品で管理している寸法、強度、外観、設備制約なども合わせて確認します。

過去データを使うときは、材料グレード、材料ロット、再生材率、製品、金型、ダイ、成形機、測定位置、測定方法を列として記録します。材料や設備、測定方法が違う試行は、その違いが表から分かるようにします。その上で、同じ実測データとして機械学習に使うかを判断します。

UIDCSの予測結果は、実測値とは分けて扱います。予測結果は、機械学習に使った実測データの範囲と品質、予測モデルの作り方によって変わります。条件候補を比較した後は、技術者が次に試す条件を選び、実機で成形して同じ測定位置を確認します。最終的に実機で確認した候補条件を採用するかは、実測結果を見て技術者が判断します。

UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)について

実験、製造、解析などで蓄積した条件と結果から、欲しい結果に近い条件候補を探すUIDCSを開発しています。

UIDCS紹介ページを見る

07

まとめ

まとめ

タイトルへの答え

肉厚がばらついたときは、まず各試行の成形条件と、製品の各測定位置の肉厚を同じ表にまとめます。その表で試行ごとの違いを見比べ、次に変える成形条件を決めます。

実際の作業は、次の5段階で整理できます。

  1. 測定位置を固定して、位置別肉厚を記録する
    上部、中央部、下部などの長手方向と、必要に応じて同じ高さの周方向を分けます。
  2. 位置別肉厚と成形条件を同じ試行に記録する
    パリソンプログラム、スクリュー回転数、押出時間、樹脂温度、ブロー圧力、ブロー時間と、その試行で測った位置別肉厚を同じ行に記録します。測定できる場合は、パリソンの長さ、径、肉厚も同じ試行の記録に追加します。
  3. 長手方向、周方向、製品重量を分けて確認する
    長手方向と周方向の肉厚分布を分け、製品重量も別の結果として確認します。
  4. 変更する条件と固定する条件を決める
    比較の基準を決め、今回何を変え、何を同じにするかを明確にします。
  5. 同じ測定位置で再測定し、変更前後を比較する
    薄かった位置だけでなく、ほかの位置や重量なども同じ基準で確認します。

試行ごとに、成形条件と位置別肉厚を同じ行に記録して蓄積します。蓄積した実測データは、データの範囲や品質を確認した上で機械学習にも使えます。機械学習では条件と結果の関係を学び、未実施条件の肉厚や重量を予測します。

References

参考文献・技術資料

  1. 成島 毅, 「押出ブロー成形における肉厚分布予測」, 成形加工, 15(4), 269–272, 2003. J-STAGE
  2. 厚生労働省職業能力開発局, 「プラスチック成形技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」, 2007(平成19年2月). 公式PDF
  3. Azizeh-Mitra Yousefi, Paul Collins, Stephanie Chang, Robert W. DiRaddo, “A comprehensive experimental study and numerical modeling of parison formation in extrusion blow molding,” Polymer Engineering & Science, 47(1), 1–13, 2007. DOI: 10.1002/pen.20662. NRC Publications Archive / DOI
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  5. Geng-Qun Huang, Han-Xiong Huang, “Optimizing parison thickness for extrusion blow molding by hybrid method,” Journal of Materials Processing Technology, 182(1–3), 512–518, 2007. DOI: 10.1016/j.jmatprotec.2006.09.015. Publisher page / DOI
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