押出成形で寸法がばらつく。どの条件から確認する?吐出量、引取速度、冷却条件の見方

押出成形でチューブを流していると、設定値を大きく変えていないのに、外径や肉厚が時間とともに動くことがあります。

寸法が変わった時刻に、実流量、圧力、引取実速度などがどう変化していたかを確認することが、参考になりそうです。Ponsarらも、押出中の圧力とフィラメント径を時間ごとに測定し、それぞれの変動を比較しています。

先に答え

どの寸法が、いつ変わったかを先に確認する

  1. どの寸法が変わったかを確認する。
    Choらは、内径、外径、肉厚、ovalityを分けて測定しています。[1]
  2. 時間変動は寸法と押出中の実測値を同じ時間軸で見る。
    Ponsarらは、押出中の圧力とフィラメント径が時間とともにどのように変動したかを比較しています。[2]
  3. 条件を比べるときは、一つの条件を変えて測定する。
    Choらは、引取速度を固定して吐出側を変える試験と、スクリュ回転数を固定して引取速度を変える試験を分けています。[1]

01 時間変動を見る

外径が振れた時刻に、実流量、ダイ圧、引取実速度を見る

平均外径だけを記録すると、運転中の外径の変動までは把握できません。

例えば、一定時間内に4回測定した外径が、6.01 → 6.02 → 6.02 → 6.01 mmの場合と、6.01 → 6.02 → 6.08 → 5.97 mmの場合を比べます。どちらも4回の測定値から求めた平均外径は約6.02 mmです(前者:(6.01 + 6.02 + 6.02 + 6.01) ÷ 4 ≒ 6.02 mm、後者:(6.01 + 6.02 + 6.08 + 5.97) ÷ 4 = 6.02 mm)。前者は外径がほぼ一定なのに対し、後者は大きく変動しています。

次の表は、時間系列での見方を説明するための架空データです。

同じ材料ロット、同じダイ、同じサイザーを使い、同じ位置と方法で外径を測定しているとします。目標外径は6.00 mm、引取設定速度は8.00 m/minです。冷却条件はAで固定します。Aは、同じ水温・流量・冷却開始位置で運転したことを表す説明用ラベルです。

時刻外径
mm
実流量
g/min
ダイ圧
MPa
引取設定速度
m/min
引取実速度
m/min
冷却条件
09:006.0112.07.28.008.01A
09:106.0212.17.28.007.99A
09:206.0712.07.38.007.86A
09:306.0812.17.38.007.84A
09:406.0312.07.28.007.97A

09:20〜09:30は、外径が6.07〜6.08 mmへ大きくなっています。同じ時間帯の実流量は12.0〜12.1 g/min、ダイ圧は7.3 MPa、引取設定速度は8.00 m/min、引取実速度は7.86〜7.84 m/minです。

この表から、外径の変化と引取実速度の変化が同じ時間帯に起きたことが分かります。

設定値と実測値を分けて見る

この例では、引取設定速度は8.00 m/minのままですが、引取実速度は7.84〜8.01 m/minの範囲で動いています。

  • 引取設定速度:引取機へ入力した目標速度
  • 引取実速度:運転中に実際に測定した速度

時間系列で見る方法は研究でも使われている

Ponsarらは、医薬フィラメントの熱溶融押出で、押出中の圧力とフィラメント径を時間ごとに測定しました。圧力とフィラメント径が、時間とともにどのように変動したかを比較しています。[2]

この研究では、「フィラメント径が変わった時刻」と「その時間帯に押出中の圧力がどう変化したか」を対応させて確認しています。対象は医薬フィラメントですが、連続押出で時間変動を確認するときの考え方として参考にできそうです。

02 条件を切り分ける

吐出側と引取側は、条件を分けて比較する

薄肉チューブの研究では、条件を分けて試験している

Choらは、熱可塑性エラストマーの薄肉チューブを対象に、スクリュ速度と実測流量、引取速度、チューブ内部の空気圧、ダイ出口から冷却開始位置までの距離を変え、内径、外径、肉厚、ovalityを測定しました。[1]

ovalityとは、この研究で使われた断面形状の偏りを表す指標です。

吐出側を見る試験では、引取速度を7.3 m/minに固定し、スクリュ速度を4〜11 rpmへ変えています。実測流量は5.12〜15.84 g/minとなり、内径、外径、肉厚が増えました。

別の試験では、スクリュ回転数を8 rpmに固定し、引取速度を5.3〜9.3 m/minへ変えています。この条件では、内径、外径、肉厚が低下しました。

引取速度を固定吐出側を変える寸法を測る
スクリュ回転数を固定引取速度を変える寸法を測る

Choらは、比較する条件以外を固定し、一つの条件を変えて寸法を測定しています。

03 寸法を個別に見る

外径だけでなく、内径・肉厚・断面形状も一緒に見る

「寸法がばらついた」と一つにまとめる前に、外径、内径、肉厚、断面形状を分けて、どの項目が変わったかを確認します。

例えば外径が変わっていても、内径も同じように動いているのか、肉厚だけが変わっているのか、断面形状が偏っているのかで、確認する項目は変わります。

Choらの研究でも、内径、外径、肉厚、ovalityを別々に測定しています。条件を変えたとき、これらの寸法・形状指標はそれぞれ異なる変化を示しました。[1]

外径、内径、肉厚、断面形状を同じ試験で記録すると、どの項目が変わったかを個別に確認できます。

04 冷却・サイジングを項目ごとに見る

「冷却条件が違う」ではなく、何が違うかまで記録する

冷却やサイジングの記録は、実際に変更した項目ごとに分けて記録します。

例えば、次のように項目を分けて記録します。

  • 冷却開始位置
  • 冷却水温
  • 冷却水流量
  • 真空条件
  • サイザー条件

冷却開始位置を変えた研究

Choらは、ダイ出口から冷却開始位置までの距離を変える試験も行っています。特定のチューブでは、この距離が30 mmを超える条件で内外径の偏差が増え、60 mmを超える条件では研究で定義したovalityが0.1を超えました。[1]

この研究では、「どこから冷やし始めるか」を変えたとき、径や断面形状に違いが見られました。

冷却の強さと開始位置を解析した研究

Spanjaardsらは、押出プロファイルの外部冷却について、冷却の強さや開始位置と、形状・残留応力の関係を数値解析しました。[3]

残留応力とは、成形後も材料内部に残る応力です。

この数値解析では、冷却の強さや開始位置によって、押出物の形状と残留応力の結果が変わりました。

Choらは冷却開始位置、Spanjaardsらは冷却の強さと開始位置を分けて扱っています。実際のラインで水温、流量、真空、サイザー条件を記録している場合も、項目を分けておけば条件差を確認できます。

05 データが増えた場合

表だけでの比較が複雑になったら、予測モデルを使う方法もある

試験データが増えると、吐出量、引取速度、冷却・サイジング条件などの組み合わせも増えます。さらに、外径、内径、肉厚など複数の結果を同時に見る場合、まだ試していない運転条件について、どの条件が候補になりそうかを表だけで比較するのは難しくなります。

Polychronopoulosらは、フラットダイ押出のシミュレーションデータ200件を使い、材料物性、吐出量、温度、ダイ内の設定などから、厚みばらつきや圧力損失などを予測する機械学習モデルを検討しました。[4]

ここでいう機械学習とは、過去の条件と結果のデータから関係を学習し、新しい条件を入力したときの結果を予測する方法です。この予測に使う仕組みを「モデル」と呼びます。

簡単に言うと、この研究では「この条件では、厚みばらつきや圧力損失がどうなりそうか」を機械学習で予測しています。

この研究の対象はフラットダイ押出のシミュレーションです。チューブ押出の実機とは対象が異なりますが、条件と結果のデータが増えたときに、予測モデルを使う例として参考になりそうです。

まとめ

寸法ばらつきは、時間と条件を対応させて確認する

  • Choらは、内径、外径、肉厚、ovalityを分けて測定している。
  • Ponsarらは、押出中の圧力とフィラメント径の変動を同じ時間軸で比較している。
  • Choらは、比較する条件以外を固定し、一つの条件を変えて寸法を測定している。
  • ChoらとSpanjaardsらは、冷却開始位置や冷却の強さを分けて扱っている。
  • データが増えたら、未実施条件の結果を予測して、候補となる運転条件を比べる方法も使える(機械学習など)。

今回紹介した文献では、次のような確認方法が使われています。

  • 時間変動は、押出中の圧力とフィラメント径を同じ時間軸で確認する。
  • 条件比較は一つの条件ずつ分けて測定する。

次のステップ

UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)

シムロンでは、手元にある運転条件と結果のデータから、次に確認する条件候補を比較する作業を支援するため、UIDCS (逆設計・条件探索プラットフォーム)を開発しています。

UIDCSは、手元にある実験、製造、解析などの「条件」と「結果」のデータを使い、どのような条件のときに、どのような結果になったのかという関係を、機械学習によってモデルに学習させます。

そのモデルを使って、まだ試していない条件の結果を予測し、欲しい結果に近い条件候補を探すことを目的としています。

条件の例

  • 吐出設定条件
  • 引取設定速度
  • 冷却開始位置
  • 内圧・真空条件
  • その他の変更可能な条件

結果の例

  • 外径
  • 内径
  • 肉厚
  • 断面形状
  • その他の品質結果

技術者は複数の予測結果を比較し、設備、材料、実際に運転できる範囲も確認しながら、実機で試す候補を選びます。最後は実際の寸法を測定し、その結果を次の条件検討に使います。

UIDCSで「欲しい結果から、条件を探す」

手元にある「条件と結果」のデータから、目標に近い条件候補を探すUIDCSを現在開発しています。

UIDCS紹介ページを見る

References

参考文献

  1. Soonmo Cho, Euntaek Lee, Seunggi Jo, Gyu Man Kim, Woojin Kim. “Extrusion Characteristics of Thin Walled Tubes for Catheters Using Thermoplastic Elastomer.” Polymers, 12(8), 1628, 2020. DOI: 10.3390/polym12081628. Publisher page
  2. Hanna Ponsar, Raphael Wiedey, Julian Quodbach. “Hot-Melt Extrusion Process Fluctuations and Their Impact on Critical Quality Attributes of Filaments and 3D-Printed Dosage Forms.” Pharmaceutics, 12(6), 511, 2020. DOI: 10.3390/pharmaceutics12060511. Publisher page
  3. Michelle M. A. Spanjaards, Martien A. Hulsen, Patrick D. Anderson. “Numerical Study of Residual Stresses Due to External Cooling in Extruded Polymer Profiles.” Macromolecular Theory and Simulations, 31(3), 2100074, 2022. DOI: 10.1002/mats.202100074. Publisher page
  4. Nickolas D. Polychronopoulos, Ioannis Sarris, John Vlachopoulos. “Implementation of Machine Learning in Flat Die Extrusion of Polymers.” Molecules, 30(9), 1879, 2025. DOI: 10.3390/molecules30091879. Publisher page
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