樹脂の配合を何種類か試し、引張強度、粘度、熱特性まで測定した。どの配合で、どの物性になったかは確認できている。
ベース樹脂、ガラス繊維、無機フィラー、添加剤を変えた説明例を使い、実験結果が出た後に次の配合をどう決めるかを整理します。これまで試した配合と物性結果を比べ、次に試す配合候補を選び、その試作結果を次の配合選びに使う流れを、樹脂材料の研究例も併せて説明します。
例えば、ガラス繊維25%のBは引張強度102 MPa、無機フィラー13%のCは熱変形温度142℃でした。Dは引張強度97 MPa、熱変形温度138℃ですが、溶融粘度は405 Pa·sです。
どの配合にも良い結果はあるものの、今回欲しい物性をすべて満たした配合はまだありません。この状態から次の配合を決めるには、「何を何%配合したか」と「そのとき何が測定されたか」を対応させ、満たしたい物性を具体的に決めます。
先に答え
- 各配合について、配合条件と物性の測定結果を対応させて一つの表にまとめます。
- 今回満たしたい物性を具体的に決めます。
- 各配合の物性結果が、設定した目標値を満たしているか確認します。
- 各配合候補の予測物性が、設定した目標値を満たしているか確認します。
- 候補を実際に試作して物性を測定します。
- 実測結果をデータへ追加し、次の配合選びに使います。
候補が多い場合には、蓄積した実験データから未実施配合の物性を予測し、次に試す候補を比較する方法もあります。
実験結果の整理
配合条件と物性結果を同じ表で見る
ベース樹脂にガラス繊維、無機フィラー、添加剤を配合し、AからDまで4種類を試したとします。測定した結果は、引張強度、溶融粘度、熱変形温度の3項目です。
表1 A〜Dの配合条件と物性結果:何を何%配合したかと、その条件で測定した3つの物性を同じ行に並べます。
| 配合 | 配合条件 | 物性結果 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 配合 | ベース樹脂 | ガラス繊維 | 無機フィラー | 添加剤 | 引張強度 | 溶融粘度 | 熱変形温度 |
| A | 77% | 15% | 5% | 3% | 82 MPa | 300 Pa·s | 122℃ |
| B | 69% | 25% | 3% | 3% | 102 MPa | 390 Pa·s | 127℃ |
| C | 69% | 15% | 13% | 3% | 89 MPa | 345 Pa·s | 142℃ |
| D | 64% | 22% | 11% | 3% | 97 MPa | 405 Pa·s | 138℃ |
ベース樹脂、ガラス繊維、無機フィラー、添加剤の配合量が「条件」です。引張強度、溶融粘度、熱変形温度が、その条件で試作して測定した「結果」です。
引張強度が最も高いのはBの102 MPa、熱変形温度が最も高いのはCの142℃です。ただし、BとCではガラス繊維だけでなく無機フィラー量も違います。BとDでも、ベース樹脂、ガラス繊維、無機フィラーの3項目が同時に変わっています。
AからDでは、ガラス繊維だけでなく、ベース樹脂や無機フィラーの配合量も同時に変わっています。そのため、物性の違いがどの成分によるものかを、この4配合の結果だけで切り分けることはできません。そこで次に、今回の開発で「どの物性を、どの値まで満たしたいか」を具体的に決めます。
目標をそろえる
次の配合を選ぶ前に、狙う物性を決める
今回の目標を、引張強度95 MPa以上、溶融粘度380 Pa·s以下、熱変形温度135℃以上とします。AからDを、この3条件で比べ直します。
表2 A〜Dを今回の目標で比較:3つの物性目標に対して、どの配合のどの結果が目標内かを確認します。
| 配合 | 引張強度 | 溶融粘度 | 熱変形温度 | 今回の目標との関係 |
|---|---|---|---|---|
| A | 82 MPa | 300 Pa·s | 122℃ | 強度、熱変形温度が目標外 |
| B | 102 MPa | 390 Pa·s | 127℃ | 粘度、熱変形温度が目標外 |
| C | 89 MPa | 345 Pa·s | 142℃ | 強度が目標外 |
| D | 97 MPa | 405 Pa·s | 138℃ | 粘度が目標外 |
Bは引張強度102 MPaで4配合の中では最も高い値ですが、溶融粘度390 Pa·sと熱変形温度127℃が目標から外れています。Cは粘度と熱変形温度が目標内で、引張強度89 MPaが目標に届いていません。
Dは引張強度97 MPa、熱変形温度138℃で、この2項目が目標に入っています。残っているのは溶融粘度405 Pa·sです。そこで、この例ではDを次の配合を考える出発点とします。3項目のうち2項目がすでに目標に入り、どの物性が不足しているかも明確だからです。
次の値はまだ決まらない
Dから次の配合をそのまま決められない理由
Dの溶融粘度405 Pa·sを380 Pa·s以下へ下げたいとしても、AからDの結果だけを見て、ガラス繊維や無機フィラーを次に何%へ変えるかまでは決まりません。
DとCを比べると、溶融粘度はDの405 Pa·sに対してCは345 Pa·sです。しかし、DとCではガラス繊維だけでなく、ベース樹脂と無機フィラーの量も同時に違います。Cは粘度が低い一方、引張強度は89 MPaまで下がっています。
DとBでも複数の配合量が同時に変わっています。この結果から分かるのは、各配合でどの物性が得られたかまでです。どの成分をどれだけ動かせば、強度と熱変形温度を保ちながら粘度だけを下げられるかまでは決められません。
樹脂やポリマーの研究では、このような場面で、次に試す条件候補をデータから選び、実際に作製して測定し、その結果を次の候補選びへ戻す研究も行われています。
樹脂材料の研究例
研究では次の配合をどう選んでいるか
Kohnoらは2026年、歯科用レジンコンポジットを対象に、実験結果から次に試す配合を逐次選ぶ研究を報告しています。[1]
研究者らは、9種類の主フィラー候補から各配合で2種類を選び、2種類のヒュームドシリカ候補のうち1種類と組み合わせて、最初に54種類の配合を作製しました。各配合について25℃で粘度を測定し、「どのフィラーを、どの割合で配合すると、どの程度の粘度になるか」という配合条件と実測結果のデータを集めました。
次に、この54種類の実測データを使って、配合条件から粘度を予測できるようにするため、機械学習を使いました。機械学習とは、これまでに得られたデータから、条件と結果の間にある関係をコンピュータに学習させる方法です。この研究では、54種類の「配合条件」と「実際に測定した粘度」を学習用のデータとして使い、「どのような配合条件なら、どの程度の粘度になりそうか」という関係を学習させています。
このように機械学習で学習した結果を使って、配合条件を入力すると粘度の予測値を出せるようにした仕組みを「予測モデル」と呼びます。つまり、機械学習は実測データから配合条件と粘度の関係を学ぶための方法であり、予測モデルは、その学習した関係を使って新しい配合の粘度を予測するためのものです。
こうして作った予測モデルを使うと、まだ実際には作製していない配合についても、配合条件から粘度を予測できます。この研究では、せん断速度0.0106 s⁻¹と74.4 s⁻¹という2つの測定条件について、それぞれ粘度を予測しています。
その後、フィラーの種類や配合比についてあらかじめ定めた制約を満たす67,140種類の候補配合を用意しました。そして予測モデルを使い、各候補配合について、2つのせん断速度それぞれでどの程度の粘度になりそうかを予測しました。
さらに、この予測モデルでは、粘度の予測値だけでなく、その予測にどの程度の不確かさが残っているかも計算しました。予測の不確かさとは、予測値がどの程度ぶれる可能性があるかを示す目安です。手元の実験データに近い条件では予測しやすい一方、実験データが少ない条件では予測の幅が大きくなることがあります。研究者らは、予測された粘度だけでなく、この予測の確かさも見ながら、次に試す配合を選びました。
これにより、67,140種類の候補配合を一つずつ作製し測定する前に、予測結果を使って多数の候補を比較できます。簡単に言うと、67,140種類すべてを実際に作製して測定するのではなく、まず予測結果を使って候補を比較し、その中から次に試す配合を選びます。
研究者らはその結果から次に試す1配合を選び、実際に材料を作製して粘度を測定しました。その実測結果をデータへ追加し、モデルを更新して、再び次の候補を選びます。[1]
作製して測定
関係を学習
評価
作製して測定
次候補を選ぶ
7回目の追加実験では、研究者らが設定した2種類の粘度条件を同時に満たす配合が得られました。候補の選択には、ベイズ最適化という方法が使われています。これは、これまでの実験データから作った予測モデルを使って、多数の候補の中から次に試す候補を決める方法です。予測された粘度だけでなく、その予測がどの程度確かなのかも考慮しながら、次に実際に試す候補を選びます。[1]
樹脂コンパウンドに近い例として、XuらはPFA樹脂とシリカフィラーからなる複合材料を研究しています。フィラー形状、表面化学、コンパウンド工程など複数の条件を対象に、実験結果を追加しながら次候補を選ぶ探索を行っています。[2]
材料系や評価項目は異なりますが、実測結果から未実施候補を評価し、選んだ条件を実際に試して、その結果を次の候補選びへ戻す反復が樹脂材料の研究で使われています。
候補が増えたとき
未実施の配合候補が増えたとき、どう比べるか
実験を重ねると、さまざまな配合条件と、それぞれの配合で得られた物性結果がデータとして蓄積されていきます。こうしたデータがあると、まだ試していない配合についても、どのような物性になりそうかを予測し、複数の候補を比較することができます。
その前提として、同じ材料系として比較できるか、試験方法や測定条件がそろっているか、検討したい配合範囲を手元のデータがどこまで含んでいるかを確認します。
まだ試していないE、F、Gを次のような配合とします。
表3 未実施の配合候補E〜G:候補となる配合条件だけがあり、物性の実測値はまだありません。
| 候補 | ベース樹脂 | ガラス繊維 | 無機フィラー | 添加剤 |
|---|---|---|---|---|
| E | 67% | 20% | 10% | 3% |
| F | 66% | 23% | 8% | 3% |
| G | 68% | 18% | 11% | 3% |
E〜Gには、まだ実測した物性値がありません。利用できる実験データ全体を使って、配合条件と物性結果の関係を機械学習で学習したモデルを作れば、こうした未実施配合の物性を予測して比較できます。
表4 E〜Gの予測結果を比較する例:3つの物性予測を、設定した目標と照らして比較します。
| 候補 | 引張強度の予測 | 溶融粘度の予測 | 熱変形温度の予測 | 今回の目標との関係 |
|---|---|---|---|---|
| E | 96 MPa | 372 Pa·s | 136℃ | 3項目とも目標内 |
| F | 100 MPa | 386 Pa·s | 137℃ | 粘度が目標外 |
| G | 94 MPa | 348 Pa·s | 140℃ | 強度が目標外 |
引張強度95 MPa以上、溶融粘度380 Pa·s以下、熱変形温度135℃以上という目標で比べると、Eは3項目とも目標内です。Fは粘度が6 Pa·s高く、Gは引張強度が1 MPa低い予測になっています。この場合、Eは実際に試作して確認する候補の一つになります。
UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)
欲しい物性から配合候補を探す
ここまでの例では、実験済みの配合と物性結果を整理し、まだ試していない配合候補の予測結果を比べました。候補が少なければ、一つずつ表を見ながら比較できます。一方、配合する材料の種類や配合量、確認したい物性が増えると、数多くの候補について複数の結果を見比べる必要があります。
シムロンでは、手元にある「条件」と「結果」のデータから、欲しい結果に近い条件候補を探す作業を支援するため、UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)を開発しています。
UIDCSでは、実験、製造、試験、CAEなどで得られた「条件」と「結果」のデータを使います。そして、「どのような条件のときに、どのような結果になったのか」という関係を、機械学習によってモデルに学習させます。
そのモデルを使って、まだ試していない条件ではどのような結果になりそうかを予測し、あらかじめ設定した欲しい結果に近い条件候補を探します。
この記事の樹脂配合の例で考えると、ベース樹脂、ガラス繊維、無機フィラー、添加剤の配合量が「条件」に当たります。引張強度、溶融粘度、熱変形温度が「結果」に当たります。
例えば、欲しい結果として「引張強度95 MPa以上」「溶融粘度380 Pa·s以下」「熱変形温度135℃以上」を設定します。UIDCSでは、これまでの配合条件と物性結果の関係を学習したモデルを使って、まだ試していない配合の物性を予測し、設定した結果に近い複数の配合候補を比較できます。
UIDCSは現在開発中です。追加試作で得られた実測結果も、次の配合候補を検討するためのデータとして使えます。
実測結果を戻す
追加試作の結果を次の配合選びへ戻す
Eについて、予測では引張強度96 MPa、溶融粘度372 Pa·s、熱変形温度136℃でした。Eを実際に配合して同じ評価方法で測定したところ、説明用の例として次の結果が得られたとします。
表5 Eの予測値と実測値:候補選択時に見た予測と、追加試作後の実測を分けて残します。
| 項目 | 予測 | 実測 |
|---|---|---|
| 引張強度 | 96 MPa | 94 MPa |
| 溶融粘度 | 372 Pa·s | 365 Pa·s |
| 熱変形温度 | 136℃ | 137℃ |
溶融粘度365 Pa·sと熱変形温度137℃は目標に入りました。一方、引張強度は94 MPaで、目標の95 MPaを1 MPa下回っています。予測96 MPaに対して、実測では2 MPa低い結果でした。
Eの実測結果も、次の配合を考えるためのデータとして使えます。ベース樹脂67%、ガラス繊維20%、無機フィラー10%、添加剤3%という配合で、引張強度94 MPa、溶融粘度365 Pa·s、熱変形温度137℃だったという実測結果です。この結果をA〜Dと同じ表へ追加します。
表6 Eの実測結果をA〜Dへ追加:追加試作の結果を同じ形式で残し、次の候補比較に使います。
| 配合 | 配合条件 | 実測結果 | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 配合 | ベース樹脂 | ガラス繊維 | 無機フィラー | 添加剤 | 引張強度 | 溶融粘度 | 熱変形温度 |
| A | 77% | 15% | 5% | 3% | 82 MPa | 300 Pa·s | 122℃ |
| B | 69% | 25% | 3% | 3% | 102 MPa | 390 Pa·s | 127℃ |
| C | 69% | 15% | 13% | 3% | 89 MPa | 345 Pa·s | 142℃ |
| D | 64% | 22% | 11% | 3% | 97 MPa | 405 Pa·s | 138℃ |
| E | 67% | 20% | 10% | 3% | 94 MPa | 365 Pa·s | 137℃ |
Kohnoらの研究でも、選んだ配合を実際に作製して測定し、その結果をデータへ追加したうえで次候補を選んでいます。[1]
配合候補を一度選んで終えるのではなく、試作結果を次の配合選びへ戻すことで、実測データを増やしながら候補を比較できます。
まとめ
次に試す樹脂配合をどう決めるか
樹脂配合の実験結果が出たら、まず、どの配合でどのような物性が得られたのかを整理し、今回の開発で満たしたい物性の目標を決めます。
これまで試した配合を比べても次に試す配合が決まらない場合は、候補となる配合を追加で試し、その結果を見ながら次の候補を考えます。
実験データが増えて候補も多くなってきた場合は、これまでの配合条件と物性結果を使って、まだ試していない配合の物性を機械学習を用いて予測し、複数の候補を比較する方法もあります。
次に試す配合を選んだ後は、実際に試作して物性を測定します。その実測結果をこれまでのデータに加え、次の配合選びに役立てます。
このように、配合を決めて終わりではなく、試作と測定の結果を次の判断につなげながら、候補を絞っていきます。
- 今回の開発で満たしたい物性と、その目標値を具体的に決めます。
- これまでに試した配合について、配合条件と実際に得られた物性結果を照らし合わせ、どの配合が目標に近いかを確認します。
- 次に試す候補が多い場合は、これまでの配合条件と物性結果を機械学習で学習し、まだ試していない配合でどのような物性になりそうかを予測して、複数の候補を比較します。
- その中から次に試す配合を選び、実際に試作して物性を測定します。得られた実測結果は、次の配合を選ぶためのデータとして使います。
樹脂コンパウンドの配合だけでなく、二軸押出機のスクリュ回転数、吐出量、温度などの運転条件も検討している場合は、二軸押出機の運転条件と混練結果の見方も参考にしてください。
References
参考文献
- Kohno T, Funayama N, Xiao L, Yamaguchi S, Imazato S. Predicting and optimizing viscosity of dental resin composites with Gaussian process regression and Bayesian optimization. Dental Materials. 2026;42(7):1112-1119.
- Xu B, Sultana TA, Kitai K, Guo J, Seki T, Tamura R, Tsuda K, Shiomi J. Experiment-in-loop interactive optimization of polymer composites for “5G-and-beyond” communication technologies. Materials Horizons. 2025;12(10):3332-3340.
