再生材のロットが変わった。射出成形品の何を確認する?材料ロット変更時の比較と成形条件の見直し

再生材のロットを旧ロットAから新ロットBへ切り替えたあと、同じ成形条件でも、成形品の重量、寸法、色などが前のロットとずれる場合があります。

材料ロットと成形条件を同時に変えると、成形品の結果に差が出たとき、どちらの影響によるものか分かりにくくなります。まず新ロットBを旧ロットAと同じ基準条件で成形し、同じ測定位置、同じ測定方法、同じ判定基準で品質結果を比べます。

条件を見直す場合は、その基準結果を残したあと、変更した条件と実測結果を別の試行として記録します。

結論

先に答え

1最初に何を確認する?旧ロットと新ロットを同じ基準条件で成形し、材料ロット、供給元、実際の成形条件、品質結果を同じ試行IDで記録します。試行IDとは、1回ごとの成形・測定を区別する番号や名前のことです。
2差が出たらどう進める?材料の流れやすさを見るMFRなど、材料測定値がある場合は、従来の範囲や供給元と取り決めた許容値と比べます。成形条件を変える場合は、変更した設定値と実測結果を別の試行として残し、選んだ成形条件の候補を実際に成形して確認します。
01

記録の準備

材料ロット変更時に、何を記録するか

材料ロットと成形条件を分けて記録する理由を、先に研究例から見てみます。

八木らは、廃家電由来の再生PP 9ロットをすべて同じ基準条件で射出成形し、成形品重量を比較しました。その結果、この研究条件では、ロットが変わったときの重量のばらつきが、同じロット内で生じる重量のばらつきの約24倍でした。[1]

この研究では、各ロットを同じ基準条件で成形し、成形条件を同じにした状態で材料ロットごとの重量を比べています。

材料ロット変更時の記録でも考え方は同じで、まず、どの材料ロットを、どの基準条件で成形し、そのときどのような品質結果になったかを一つの試行として残します。

ここでいう材料ロットは、材料の製造単位や供給単位を区別するために現場で追跡する単位です。

例えば、材料名やグレード名が同じ再生PPでも、前回受け入れた材料のロット番号が「L01」、今回受け入れた材料が「L02」であれば、L01とL02を別の材料ロットとして記録します。簡単に言うと、「同じ材料名だから同じもの」と一括りにせず、どの供給単位の材料を使った試行なのか後から分かるようにするための番号です。

基準条件とは、旧ロットと新ロットを比べるために、まず両方で同じ値にそろえる成形条件です。

例えば、旧ロットAを樹脂温度205℃、射出速度65 mm/s、保圧35 MPaで成形していたなら、新ロットBも、まず同じ205℃、65 mm/s、35 MPaで成形します。

このように成形条件をそろえておくと、AとBの結果に差が出たときに、成形条件を同時に変えた影響と混ざらず、材料ロットを切り替えた前後の差を確認しやすくなります。

実際に使う値は、材料メーカーの推奨範囲や成形機・金型などの設備条件を確認して設定します。

比較用の記録では、次の項目を同じ試行IDで追えるようにします。

MFR(メルトフローレイト)は、一定の温度と荷重で溶融樹脂の流れやすさを見る材料指標の一つです。管理寸法は、その製品の品質判定で確認している寸法を指します。色差は、色の違いを数値で表した値です。

記録する項目 比較するときに見るもの
追跡情報 試行ID、材料ロット、供給元 どの材料ロットを使った試行か
材料側の情報 MFRなどの測定値、受入時の材料情報 従来範囲、供給元との許容値
成形条件 樹脂温度、射出速度、保圧 基準条件から何を変えたか
品質結果 重量、管理寸法、色差など 旧ロット、自社の品質基準

品質結果は「どこを、どう測ったか」まで残す

「寸法が変わった」「色が変わった」とだけ記録するのではなく、どこを、どの方法で測ったのかも一緒に残します。そうしておけば、後から旧ロットと新ロットを同じ基準で比べられます。例えば、次のように測定位置、測定方法、判定基準まで同じ表に残します。

以下の数値は、記録方法を説明するために設定した例です。

品質項目 測定位置・測定方法の例 旧ロットA 新ロットB 説明用の品質基準
製品重量 同じ秤、同じ測定タイミング 100.2 g 100.8 g 99.8~100.5 g
管理寸法X 同じ測定位置、同じ測定器 50.01 mm 50.08 mm 49.95~50.05 mm
色差 同じ位置、同じ色差計 0.4 1.1 1.0以下

この例なら、新ロットBでは製品重量、管理寸法X、色差が説明用の基準から外れています。次に成形条件を見直すときも、同じ位置、同じ方法で測定してA、B、条件変更後の試行を比べます。

02

比較の記録

新旧ロットと条件変更後を同じ表で比べる

以下は、記録方法を説明するための例です。温度、速度、圧力は説明用の数値で、実製品では材料仕様、金型、設備、品質基準に合わせて条件を設定します。

試行ID 材料ロット 樹脂温度 射出速度 保圧 製品重量 管理寸法X 変更内容
A 旧ロット 205℃ 65 mm/s 35 MPa 100.2 g 50.01 mm 旧ロット基準
B 新ロット 205℃ 65 mm/s 35 MPa 100.8 g 50.08 mm 新ロット基準
C 新ロット 210℃ 65 mm/s 35 MPa 測定後に記録 測定後に記録 樹脂温度だけ変更
D 新ロット 205℃ 75 mm/s 35 MPa 測定後に記録 測定後に記録 射出速度だけ変更

AとBは、樹脂温度205℃、射出速度65 mm/s、保圧35 MPaが共通し、材料ロットだけが違います。まずこの2行でロット切替前後の結果差を確認します。

BとCでは、新ロットBを使ったまま射出速度65 mm/s、保圧35 MPaを固定し、樹脂温度だけを205℃から210℃へ変えます。BとDでは樹脂温度205℃、保圧35 MPaを固定し、射出速度だけを65 mm/sから75 mm/sへ変えます。

CとDの結果欄は、実際に成形して測定した後に埋めます。この例では比較しやすくするため変更項目を一つにしていますが、実務で複数条件を同時に変更する場合もあります。その場合は変更した設定値をすべて記録します。

複数の条件を同時に変えた一回の比較から確認できるのは、「その条件の組み合わせを変えたときに結果がどう変わったか」までです。各条件の寄与を分けて見たい場合は、比較する試行の組み方も分けます。

03

研究例

再生PP 9ロットを同じ基準条件で比べた研究

研究では何が課題で、何を行ったか

八木らは、メカニカルリサイクル材では、回収材のグレードや熱履歴が異なるため材料ロット間の特性ばらつきが大きくなりやすく、その影響で射出成形品の品質管理が難しくなる場合があることを課題として挙げています。[1]

また、生産現場では投資コストや保守リスクの面から、金型内に新しいセンサを設置しにくい場合があります。そこで著者らは、金型内センサを追加せず、材料ロットごとに成形条件を調整して成形品重量を安定させる方法を検討しました。

研究の流れを整理すると、次の4段階です。

段階 研究で行ったこと 確認したもの
1. ロット差を確認 再生PP 9ロットを同じ基準条件で40個ずつ成形 成形品重量のロット内・ロット間ばらつき
2. 予測モデルを作る 3ロットで条件を変えながらデータを取得 基準重量と成形条件から成形品重量を予測
3. 条件を探す 残る6ロットで候補条件ごとの重量を予測し、目標63.90 gに近い条件を探索 樹脂温度、射出速度、保圧の組み合わせ
4. 実成形で確認 抽出した条件で実際に射出成形 目標重量への近づき方、ロット間ばらつき

PPはポリプロピレンの略です。材料には廃家電由来のポリプロピレンリサイクル材を使っています。

成形機はFANUC ROBOSHOT α-i50A、金型は5点ピンゲート構造でした。5点ピンゲート構造は、5か所のピンゲートから樹脂を金型内へ充填する構造です。

基準条件は次の3項目です。

項目 基準条件
樹脂温度 190℃
射出速度 80.3 mm/s
保圧 40 MPa

各ロットを40個ずつ成形し、品質指標として成形品重量を測定しました。寸法など重量以外の品質指標は、この研究では今後の検証課題として挙げられています。[1]

ロット内ばらつきとロット間ばらつき

ここで使う標準偏差は、測定値が平均値の周りにどの程度散らばっているかを表す指標です。

八木らは、ロット内ばらつきを「各ロット内で求めた重量の標準偏差を、ロット間で平均した値」、ロット間ばらつきを「各ロットの平均重量について求めた標準偏差」と定義しています。

報告値は次のとおりです。

  • ロット内ばらつき:0.037
  • ロット間ばらつき:0.89

この研究条件では、9ロット全体で見たロット間ばらつきが、ロット内ばらつきの約24倍でした。[1]

なお、後で出てくる「1.06」は、検証用に分けた6ロットだけを基準条件で比較したときのロット間ばらつきです。ここで示した「0.89」は9ロット全体の値なので、集計対象が異なります。

対象ロットの基準重量と成形条件から、別条件の重量を見積もる

基準条件でロットごとの重量差を確認したあと、八木らは、機械学習を使って「成形条件を変更した場合、重量がどうなるか」を実成形前に見積もる方法を検討しました。

簡単に言うと、新しいロットで何通りもの成形条件をすべて試す前に、機械学習を使って各条件での成形品重量を予測し、その予測結果から目標重量に近づきそうな条件を探すことを試みました。

研究では9ロットのうち3ロットを学習用に使い、この3ロットの実測データから成形条件と重量の関係を表す予測モデルを作りました。残る6ロットは検証用とし、作った予測モデルが学習に使っていないロットでもどの程度使えるかを確かめています。[1]

機械学習では何をするのか

機械学習では、実際に成形した試行ごとに、「成形条件」と「その条件で測定した重量」を記録した実測データを使います。

例えば、樹脂温度、射出速度、保圧を変えて成形した試行ごとに、そのときの成形品重量を記録します。こうした複数の実測データを使って、樹脂温度、射出速度、保圧を変えたときに、「成形品重量がどのくらいになるのか」を予測できるようにします。この処理を学習と呼びます。

学習した予測モデルに、まだ実際には試していない樹脂温度、射出速度、保圧を入力すると、その条件で成形した場合の重量を予測できます。

つまり、この研究では、まず実測データから「成形条件を入力すると、重量を予測できるモデル」を作り、その予測結果を使って目標重量63.90 gに近づきそうな条件を探しています。候補が見つかった後は、その条件で実際に成形して重量を確認しています。

八木らが予測モデルを作るために使ったデータ

八木らは、成形品重量を予測するため、回帰モデルを使いました。回帰モデルは、入力した条件や測定値から、重量のような数値を予測するモデルです。研究で使ったRidge回帰(リッジ回帰)は、この回帰モデルの一つです。

学習用の3ロットでは、ロット、樹脂温度、射出速度、保圧の組み合わせをL18直交表に割り付け、18サンプルのデータを取得しました。さらに、3つの学習用ロットをそれぞれ基準条件で成形した3サンプルを加え、合計21サンプルで回帰モデルを作っています。

L18直交表は、複数の条件を組み合わせて実験するときに、どの組み合わせを試すかを計画するための実験計画表の一つです。この研究では、限られた試行数で、ロット、樹脂温度、射出速度、保圧を組み合わせたデータを取得するために使っています。[1]

予測モデルへ入れる値(入力)と、予測する値(出力)を分けると次のようになります。

役割 項目 この研究での意味
入力 対象ロットを基準条件で成形したときの重量 そのロットで最初に取得する基準となる重量
入力 樹脂温度 予測したい成形条件の一つ
入力 射出速度 予測したい成形条件の一つ
入力 保圧 予測したい成形条件の一つ
出力 成形品重量 上の条件で成形したときの予測結果

新しいロットで予測するときは、まずそのロットを基準条件で一度成形して重量を測ります。その基準重量と、候補となる樹脂温度、射出速度、保圧を予測モデルへ入力し、「この条件なら重量はどの程度になりそうか」という予測値を求めます。

目標63.90 gに近づく条件と実成形

八木らは成形品重量の目標を63.90 gに設定し、対象ロットの基準重量を固定した上で、樹脂温度、射出速度、保圧の候補を組み合わせて重量を予測し、予測重量が63.90 gに最も近くなる条件を探しました。

簡単に言うと、新しいロットで何通りもの条件を実際に成形して試す前に、候補となる成形条件ごとの重量を予測し、目標の63.90 gに最も近づきそうな条件を選んだということです。

このように、複数の候補から目標に近い条件を探す作業を、この記事では条件探索と呼びます。

条件探索に使う最大値と最小値は、研究者らが成形機と金型へ悪影響を与えない範囲として設定しています。[1]

検証6ロットで最終的に抽出された条件値は、次の範囲でした。

条件 6ロットで抽出された値の範囲
樹脂温度 181~196℃
射出速度 41~119 mm/s
保圧 25~49 MPa

この表は、検証6ロットについて最終的に抽出された条件値の最小値と最大値をまとめたものです。探索候補全体の上下限とは区別して読みます。

研究者らは、予測によって選んだ成形条件で実際に射出成形し、成形品重量を確認しました。

検証に使った6ロットでは、ロット間の重量ばらつきが、基準条件での1.06から、選んだ成形条件では0.36まで小さくなりました。論文では、ロット間ばらつきが約2.9倍改善したと報告されています。[1]

簡単に言うと、ロットごとに成形条件を調整することで、6ロットの成形品重量の違いを全体として小さくできたということです。

また、6ロットはいずれも、基準条件で成形したときより成形品重量が目標63.90 gに近づきました。一方、3ロットでは、ほかのロットと比べて目標値との差が大きく残りました。[1]

つまり、6ロットすべてで成形品重量は目標値に近づき、ロット間の重量差も小さくなりましたが、目標重量への近づき方にはロットごとの差が見られました。

学習データから離れたロットの扱い

予測モデルを用いて予測する場合、予測したいロットや成形条件が、予測モデルを作るときに使った実測データに近い範囲にあるかどうかが、予測値の信頼性を考えるうえで重要です。過去の実測データから大きく離れたロットや条件では、予測した値と実際の結果がずれる可能性があります。

判断には、データ数に加えて、予測したいロットや条件の近くに参考になる学習データがあるかどうかも関係します。例えば、データが多くても、すべて似た材料や狭い条件範囲に偏っていれば、そこから大きく離れたロットや条件を予測するときに参考にできるデータは少なくなります。

そこで八木らは、入力する値がモデル作成用データからどの程度離れているかを確認するため、Applicability Domain(適用範囲、AD)を設定しました。

ADは、予測したいロットや条件が、モデル作成に使ったデータに近い範囲にあるかを見るための考え方です。

検証6ロットのうち1ロットは基準条件でもAD外となり、条件探索後もAD外でした。論文では、このロットで予測値と実測値が離れた理由を、学習データとの距離から考察しています。[1]

簡単に言うと、ADは、「今回予測したいロットや条件の近くに、予測モデルを作るときに使ったデータがあるか」を確認するための目安です。

似た学習データがある範囲では、そのデータをもとに予測できます。学習データから大きく離れたロットや条件では、予測値と実測値がずれる可能性があります。そのため、ADを確認した後も、選んだ条件で実際に成形し、成形品重量などの結果を確認することが重要です。

04

材料側の確認

MFRと色をロットごとに記録した国内企業事例

材料ロットを切り替えたときは、成形品の結果に加えて、MFRや色などの材料特性もロットごとに見ておくと、何が変わったのかを整理しやすくなります。茨城県工業技術センターの支援事例では、材料ロットごとにMFRと色を測定し、その違いを数値で確認しています。[2]

支援先企業では、同じ樹脂材料を使っていても、ロットが変わるたびに寸法精度を保つため成形条件を調整していました。製品寸法を確認しながら条件を合わせるため、調整に時間がかかっていました。また、材料ロットが変わると、製品の色にもわずかな違いが出ることがありました。

そこで茨城県工業技術センターは、材料ロットごとにMFRと色を測定し、ロットが変わると材料側の数値がどの程度変わるのかを記録しました。

MFRは、溶融した樹脂の流れやすさを見る材料指標で、色は色差計で測定します。このように、各ロットのMFRと色を数値で記録し、そのデータを長期的に蓄積しました。

蓄積したデータをもとに、支援先企業と、樹脂材料を配合・調製するコンパウンドメーカーは、MFRと色について「どの範囲までを受け入れるか」という許容値を数値で取り決めました。

その結果、支援事例では、ロット切替時の成形条件調整を4時間から2時間へ短縮した例が報告されています。ロット間の色の変動も抑えられました。[2]

簡単に言うと、この支援事例では、材料ロットごとのMFRと色を測定・蓄積して変動幅を把握し、そのデータをもとに支援先企業とコンパウンドメーカーが許容値を取り決めています。

なお、この資料で確認できる材料区分は「樹脂材料」です。この記事では、材料ロット切替時に材料側の数値を確認する実務例として紹介しています。[2]

材料側と供給元の確認項目

材料ロットを切り替えたときは、成形条件と品質結果に加えて、利用できる材料情報も同じロットIDで記録します。

  • MFRなど、社内で測定している材料特性
  • 色差など、受入時に確認している定量値
  • 材料メーカーやコンパウンドメーカーから受け取るロット情報
  • 自社の受入範囲や、供給元と取り決めた許容値

茨城県工業技術センターの支援事例では、MFRと色の変動幅を把握した後、供給元との許容値設定へ進んでいます。[2]

この事例からは、成形条件だけを見るのではなく、材料側の測定値もロットごとに蓄積し、供給元とのやり取りに活用する流れが分かります。

05

候補を探す

試行が増えた後、まだ試していない条件から候補をどう探すか

ロット切替ごとに基準条件と変更条件を記録していくと、試行数と条件の組み合わせが増えていきます。試行数や条件の組み合わせが増えると、過去の記録を見ながら、「まだ試していない条件では結果がどうなるか」を一つずつ考えるのが難しくなります。

そこで、過去の実測データから「まだ試していない条件では、結果がどうなりそうか」を見積もる方法があります。以下では、まだ実際に成形していない条件を未実施条件と呼びます。

この記事で紹介した八木らの研究でも、各ロットを基準条件で成形したときの重量に加え、樹脂温度、射出速度、保圧と、その条件で測定した成形品重量を使って予測モデルを作り、まだ試していない条件での重量を予測していました。[1] このように、過去の実測データから未実施条件の結果を予測する方法の一つが、機械学習です。

実測した条件と結果 → 機械学習で関係を学ぶ → 予測モデルを作る → 未実施条件の結果を予測する

という順で考えます。

例えば、A、B、C、Dのような実測記録が増えれば、「樹脂温度、射出速度、保圧がこの組み合わせのとき、重量や寸法はどうなったか」という関係を学習データとして使えます。

種類
追跡・識別用 試行ID、材料ロット、供給元
予測に使う条件の候補 樹脂温度、射出速度、保圧、利用可能な数値の材料測定値
予測・確認する結果 製品重量、管理寸法、色差などの定量結果

この表では、試行を追跡するための情報と、予測モデルに使う条件の候補を分けています。試行ID、材料ロット、供給元は、どの試行のデータなのかを後から確認するための情報です。一方、樹脂温度、射出速度、保圧などは、条件を変えたときの結果を予測するための入力項目として使います。

材料ロットIDや供給元を予測モデルの入力として扱うかどうかは、予測したい内容や使用する解析方法によって変わります。

射出成形の過去データ全般から次の条件を考える流れは、「射出成形の過去データを次の条件出しにどう使う?成形条件と品質結果の比べ方」でも詳しく整理しています。

ここまでは、過去の実測データから予測モデルを作り、まだ試していない条件の結果を予測する一般的な流れを見てきました。次に、予測結果が目標に近い条件を探す方法を見ていきます。

UIDCSで、目標に近い成形条件を探す場合

シムロンでは、条件と結果のデータから未実施条件の結果を予測し、欲しい結果に近い条件を探すため、UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)を開発しています。

欲しい結果から、条件を探す。

ここでいう逆設計・条件探索は、「この条件なら、どんな結果になるか」を見るだけでなく、先に欲しい結果を決め、その結果に近づく条件候補を探す考え方です。

例えば、考え方の向きを分けると次のようになります。

考え方 質問の例 入力と出力
結果を予測する 「205℃、65 mm/s、35 MPaなら、重量はどのくらいになりそうか?」 成形条件 → 重量などの予測結果
逆設計・条件探索 「目標重量に近づくには、どの成形条件が候補になるか?」 欲しい結果 → 予測結果が目標に近い条件を探す

UIDCSは、実験、製造、解析などで蓄積した条件と結果のデータから、条件を入力すると結果を予測できるモデルを機械学習で作ります。その予測モデルで未実施条件ごとの結果を見積もり、予測結果が目標に近い条件を探します。

例えば射出成形では、樹脂温度、射出速度、保圧などを予測モデルに入力し、その条件で成形したときの製品重量や管理寸法を予測します。

UIDCSで得られる条件は、使用したデータと予測モデルをもとに選んだ成形条件の候補です。実際の成形条件として採用するときは、設備制約、材料状態、品質基準を確認し、実成形の結果を見て技術者が判断します。

UIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)について

手元にある条件と結果のデータから、まだ試していない条件の結果を予測し、欲しい結果に近い条件を探すUIDCSを開発しています。

UIDCS紹介ページを見る

06

まとめ

まとめ

タイトルへの答え

材料ロットが変わったときは、まず成形条件を変えず、旧ロットと同じ基準条件で新ロットを成形して結果を比べます。その結果を確認したあと、成形条件を見直します。

  1. 材料ロットと供給元を記録する。
  2. 材料仕様と設備制約を確認したうえで、旧ロットと同じ基準条件で新ロットを成形する。
  3. 同じ測定位置、測定方法、判定基準で品質結果を記録し、旧ロットと自社の品質基準を比べる。
  4. MFRなどの材料測定値があれば、従来範囲や供給元との許容値も確認する。
  5. 条件を変えたら、変更した設定値と実測結果を別の試行として残す。
  6. データから候補条件を選んだ場合も、実際に成形して結果を確認する。

八木らの研究では、再生PP 9ロットを同じ基準条件で比較し、対象ロットの基準重量と成形条件から目標重量に近い条件を探し、実成形で確認しています。

茨城県工業技術センターの支援事例では、材料ロット切替時にMFRと色を測定・蓄積し、供給元との許容値設定まで進めています。

材料ロット、成形条件、品質結果を一つの試行IDで追える形にしておけば、ロット切替で何が変わったかを確認し、次に見直す条件や材料側の確認項目を選びやすくなります。

References

参考文献・技術資料

  1. 八木大介, 中土裕樹, 島田遼太郎, 小林漢. 「射出成形プロセス条件の最適化によるリサイクル材の成形品品質安定化」成形加工, 34(11), 419–422, 2022. DOI: 10.4325/seikeikakou.34.419. J-STAGE
  2. 茨城県工業技術センター. 「プラスチック射出成形の生産効率の改善支援」株式会社荒川樹脂 支援事例. 公式PDF
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