高水分大豆ミートを二軸押出機で何回か試作すると、次に何を変えるか迷うことがあります。
たとえば、水分条件を変えた試作では繊維状の組織が良く見えたものの、硬さは狙いから外れた。温度条件を変えた別の試作では、表面や裂いたときの状態が変わった。一つの結果だけでは、次の条件を決めにくい場面です。
まず確認したいのは、各試作で何を変え、何を同じにしたかです。そのうえで、繊維状組織、硬さ、水分保持に関する測定値など、採否に使う結果を同じ試作単位で比べます。
水分条件と温度条件のどちらを次に変えるかは、「次の一回で何を確かめたいか」を先に決めてから選びます。水分条件の影響を見たいなら温度などをそろえて水分条件を変え、温度条件の影響を見たいなら水分条件などをそろえて温度条件を変えます。
この記事は、こんな方におすすめです
- 高水分大豆ミートを二軸押出機で試作している
- 水分条件や温度条件を変えて何回か試したが、次に何を変えるか決めにくい
- 繊維状組織だけでなく、硬さや水分保持に関する結果も一緒に確認したい
- 試作条件と測定結果を、次の条件出しに使いたい
この記事で分かること
- 試作結果を比べる前に確認したい項目
- 水分条件や温度条件を変えた研究で、何を測り、どんな違いが出たか
- 試作条件と複数の測定結果を一つの表で比べる方法
- 次の試作で水分条件と温度条件のどちらを変えるか決める考え方
- 試作数が増えたとき、過去データを未試行条件の比較へ使う方法
先に答え
比較する前に、何を同じにしたか確認する
一度に水分条件、原料の配合、スクリュ構成、供給量、スクリュ回転数まで変えると、結果が変わっても、どの変更が原因だったのか分かりません。
水分条件の影響を見たいなら、できるだけ他の条件をそろえ、水分条件だけを変えた試作を比べます。どうしても他の条件も変わる場合は、その違いを記録し、単純な一条件の比較とは分けて扱います。
表1 試作結果を比べる前に確認する項目
| 分類 | 記録する項目 | 比較するときに確認すること |
|---|---|---|
| 原料 | 原料種類、配合、ロット | 原料種類・配合・ロットが同じか |
| 装置 | 二軸押出機、スクリュ構成 | 同じ押出機・同じスクリュ構成か |
| 運転 | 供給量、スクリュ回転数 | 主条件以外に供給量・スクリュ回転数が変わっていないか |
| ダイと冷却 | ダイ条件、冷却条件 | ダイ条件・冷却条件が同じか |
| 評価 | 測定方法、測定位置、測定時点 | 同じ方法・位置・時点で測っているか |
エクセルなどを使い試作番号ごとに、設定した条件と測定結果を同じ行へ記録します。そうすれば、硬さや繊維状組織が変わったときに、その結果がどの試作条件で得られたものかを確認できます。
二軸押出機の回転数、吐出量、温度と混練結果の見方は、樹脂の二軸押出を対象にした「二軸押出機の運転条件、次にどこを変える?回転数、吐出量、温度と混練結果の見方」でも扱っています。
水分条件と測定結果
高水分の大豆タンパク食品では、水分条件を変えたときに、押出中の状態と製品の食感や組織が同時に変わった研究例があります。
Linらは、大豆たんぱく分離物(soy protein isolate)と小麦でんぷん(wheat starch)を9:1で配合し、水分条件(moisture content)を60%、65%、70%、調理温度(cooking temperature)を138℃、149℃、160℃に設定して、高水分の大豆たんぱくミート代替品を二軸押出しました。 [1]
押出中には、製品温度(product temperature)とダイ圧力(die pressure)を測定しています。製品側では、食感の抵抗感に関する評価(toughness)、咀嚼性(chewiness)、凝集性(cohesiveness)といった食感の指標、層状・繊維状構造(layered / fibrous structure)、吸水能(water absorption capacity)を評価しました。 [1]
この実験系では、押出中の工程値や製品の食感に対して、調理温度より水分条件の影響が大きいことが確認されました。水分が低い条件では、製品温度とダイ圧力が上昇しました。また、得られた製品は、食感の抵抗感、咀嚼性、凝集性が高く、層状・繊維状構造も強くなったと報告されています。一方、吸水能は、水分条件を高くした場合も、調理温度を高くした場合も増加しました。 [1]
簡単に言うと、この研究では、温度条件よりも水分条件のほうが、押出中の状態や製品の食感、繊維状構造に大きく影響したということです。
吸水能(water absorption capacity)と、後述する保水能(water-holding capacity、WHC)は別の評価指標です。
de Boerらは、大豆たんぱく濃縮物(soy protein concentrate、SPC)と大豆たんぱく分離物(soy protein isolate、SPI)を対象に、高水分押出を行いました。水分条件は50〜70%、押出機の設定温度プロファイル(set process temperature profile)は100〜160℃です。 [2]
測定したのは、硬さ(hardness)、保水能(water-holding capacity、WHC)、粒子径(particle size)などです。SPCとSPIのどちらでも、これらの物理特性は、設定温度プロファイルより水分条件の影響を強く受けたと報告されています。 [2]
簡単に言うと、この研究でも硬さや保水能などの物理特性に、温度設定よりも水分条件のほうが大きく影響したということです。
これらの研究では、水分条件を変えたときに、食感や繊維状の構造など複数の結果が変化しています。水分条件を変える試作では、繊維状組織だけでなく、硬さなど採否に使う結果も同じ試作番号で記録します。WHCを使う場合は、各試作を同じ測定方法で測り、試作間で同じ指標を比べます。
温度条件と繊維状態・硬さ
日本製鋼所は、食品用二軸押出機TEX30を使い、脱脂大豆から大豆ミートを製造した試験結果を報告しています。
この試験では、脱脂大豆と水の比を6:4、スクリュ回転数を200 rpmに固定し、混練部シリンダ温度を120℃から5℃ずつ上げてサンプルを採取しました。研究者らは120℃、130℃、145℃のサンプルを手で裂き、組織化の進み具合を比べています。[3]
120℃では細かな繊維が見られたものの、繊維の塊が凝集した状態で崩れやすく、押出方向に関係なく裂けました。
130℃では繊維が押出方向に配向し、太い繊維束と細かな繊維が混在しました。
145℃では裂くことが難しいほど硬く、押出方向に配向した繊維が積み重なった層が観察されています。
シリンダ温度が高くなるにつれて、表面の繊維の粗さが抑えられ、滑らかになる傾向も報告されています。[3]
温度条件を記録するときは、混練部シリンダの設定温度、バレルの設定温度、文献で使われる cooking temperature など、温度の種類を分けて記録した方が分かりやすいです。
自社で試作する場合、温度条件の記録と一緒に、どの位置の設定温度を変えたか、その試作で繊維状組織や硬さがどう変わったかも同じ行に残します。
試作条件と測定結果を一つの表にする
試作条件を比べるときは、原料、装置、スクリュ構成、ダイ、冷却、評価方法のもとで得た結果を並べます。
原料、配合、二軸押出機、スクリュ構成、供給量、スクリュ回転数、温度条件、ダイ、冷却条件は同じとし、自社で定義した水分条件だけを変えたとします。
繊維状組織は、次の3段階で評価します。
- A:狙った方向に明瞭な繊維状組織が見られる
- B:繊維状組織は見られるが、狙った状態には達していない
- C:狙った繊維状組織を確認しにくい
硬さとWHCは、試作Aの測定値を100とした相対指数で示します。すべて同じ社内測定法で測ったものとします。
水分条件1、2、3は、同じ社内定義で段階的に変えた三つの設定です。
表2 高水分大豆ミートの試作条件と測定結果の比較例(比較方法を説明するための例です)
| 試作 | 水分条件 | 温度条件 | 繊維状組織 | 硬さ 相対指数 |
WHC 相対指数 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 条件1 | 基準 | C | 100 | 100 |
| B | 条件2 | 基準 | A | 94 | 108 |
| C | 条件3 | 基準 | A | 82 | 116 |
この例では、目標を次のように設定します。
- 繊維状組織:A
- 硬さ相対指数:90〜100
- WHC相対指数:110以上
Bは繊維状組織がAで、硬さ相対指数94も目標範囲に入っています。WHC相対指数は108で、目標の110には届いていません。
Cは繊維状組織がAで、WHC相対指数116は目標を満たしています。一方、硬さ相対指数82は、目標範囲90〜100から外れています。
繊維状組織Aと硬さ90〜100を保ちながらWHCを110以上へ近づけたいなら、条件2と条件3の間に新しい水分条件を設定して、三つの結果をもう一度測るという次の試作が考えられます。
硬さを優先し、WHC 110以上を必須条件にしない製品なら、判断は変わります。つまり、先に製品側の目標を決めることで、同じ表でも何を基準に次の条件を選ぶかが明確になります。
次の試作で何を確かめるかを先に決める
水分条件と温度条件のどちらを次に変えるかは、次の試作で確かめたいことから決めます。
表2からは、例えば次の問いを置けます。
水分条件を条件2と条件3の間にしたとき、繊維状組織Aと硬さ90〜100を維持しながら、WHC相対指数を110以上にできるか。
この問いを確かめるなら、次の試作では水分条件を変えて試します。
水分条件1〜3を試しても、繊維状組織と硬さについて確認したい点が残るなら、水分条件を一つに固定して温度条件を変える系列を別に作れます。
水分条件を固定したまま温度条件を変えたとき、繊維状組織と硬さはどう変わるか。
水分条件の違いを確認する系列なら、比較可能な範囲で温度、供給量、スクリュ回転数、スクリュ構成、ダイ、冷却条件をそろえます。温度条件の違いを確認する系列なら、水分条件など他の比較条件をそろえます。
複数の条件を同時に変えた試作は、一つの条件だけを変えた系列とは分けて記録します。
次の試作でWHCを確認したい場合でも、繊維状組織や硬さも評価するなら、これらの測定を続けます。
表2の例なら、次の試作を一文でこう決められます。
次の試作では、水分条件を条件2と条件3の間に設定する。その他の比較条件はそろえ、繊維状組織、硬さ、WHCを測定し、三つの目標を同時に満たせるか確認する。
実際の水分設定や固定する温度、測定方法は、自社の原料や装置、これまでの試作結果を見て判断します。
試作が増えると、未試行条件まで手作業で比べにくくなる
試作数が少ないうちは、表を見ながら次の試作が考えられます。
試作を重ねると、水分条件、温度、供給量、スクリュ回転数など、条件の組み合わせが増えます。結果側にも、繊維状組織、硬さ、WHC、製品温度、圧力、トルクなどが蓄積されます。
さらに、まだ試していない条件まで候補にすると、過去の試作結果を見ながら、一つずつ手作業で候補を比べるのが難しくなります。
このような場合、過去の試作データから、まだ試していない条件でどのような結果になりそうかを予測できれば、次に試す候補を絞る手がかりになります。
その予測方法の一つが機械学習です。
各試作について、設定した条件と測定結果を同じ行に残しておけば、機械学習を用いて、条件と結果の関係を学習した予測モデルを作ることができます。
ここでいう予測モデルとは、これまでの試作データから学習した関係(条件と結果の関係)を使い、水分条件、温度、供給量、スクリュ回転数などの条件を入力すると、硬さやWHCなどの結果を予測する仕組みです。
その予測モデルにまだ試していない条件を入力すると、その条件で硬さやWHCなどがどのような値になりそうかを予測できます。こうした予測結果を使えば、複数の条件候補を並べて比較でき、次の試作条件を検討する時間や手間を減らすことができます。
UIDCSで、まだ試していない条件候補を比べる
シムロンでは、こうした条件候補の比較を支援するため、手元にある「条件」と「結果」のデータから、欲しい結果に近い条件候補を探すUIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)を開発しています。
高水分大豆ミートの試作データの場合、例えば次の項目を入力条件として使えます。
過去データの条件
- 原料種類、配合
- 水分条件
- 供給量
- スクリュ回転数
- 温度条件
- スクリュ構成
- ダイ条件、冷却条件
結果側には、例えば次の測定値を使います。
過去データの結果
- 繊維状組織の評価値
- 硬さ
- 保水能(water-holding capacity、WHC)など、自社で測定している水分保持に関する結果
- 製品温度
- 圧力
- トルク
そして、ユーザーがUIDCSで目標値(目指したい結果)を設定します。表2の例なら、次のように設定できます。
(表2の繊維状組織A・B・Cを数値で扱う例として、A=3、B=2、C=1とします)
- 繊維状組織の評価値:3
- 硬さ相対指数:90〜100
- WHC相対指数:110以上
UIDCSでは、まだ試していない条件の中から、目標に近い複数の条件候補を結果として提示します。各条件候補には、繊維状組織の評価値、硬さ、WHCなどの予測値も表示されるため、候補条件ごとの違いを見比べながら、次に試す条件を検討しやすくなります。
予測結果は、学習に使った過去データの範囲や品質によって変わります。候補条件を確認した後は、原料、設備、食品品質管理、衛生、実機運転上の制約などを踏まえて、技術者が実際に試す条件を選び、その条件で試作し、測定結果を確認します。
過去データから欲しい結果に近い条件候補を探す考え方、対象データ、利用イメージは、UIDCSの製品ページで確認できます。
まとめ
タイトルへの答え:水分条件と温度条件のどちらを次に変えるかは、次の試作で何を確かめたいかから決めます。水分条件の影響を確かめたいなら、温度など他の条件をそろえて水分条件を変えます。温度条件の影響を確かめたいなら、水分条件など他の条件をそろえて温度条件を変えます。
その判断には、これまでの試作条件と測定結果を使います。
- 各試作で何を変え、何を同じにしたかを確認する
- 試作ごとに、繊維状組織、硬さ、保水能(WHC)など、判断に使う結果も記録する
- 次の試作で確かめたいことを決め、水分条件か温度条件など、次に変える条件を選ぶ
- 試作数と条件数が増えたら、過去データから未試行条件の結果を予測し、複数の条件候補を比べる方法も検討する
要点は、「どの条件で、どのような結果になったか」を残し、その結果を見ながら次に変える条件を決めることです。
参考文献
- Lin, S., Huff, H. E., & Hsieh, F. (2002). “Extrusion Process Parameters, Sensory Characteristics, and Structural Properties of a High Moisture Soy Protein Meat Analog.” Journal of Food Science, 67(3), 1066-1072. DOI
- de Boer, J., Capuano, E., Kers, J. G., & van der Goot, A. J. (2025). “High-moisture extrusion enhances soy protein quality based on in vitro protein digestibility and amino acid scores.” Food Research International, 211, 116353. DOI
- 福田瑞香、梅田光秀、小田智也、宮川真里奈、有留北斗、福澤洋平 (2024). 「食品用二軸押出機による大豆ミート製造プロセスと予測シミュレーション」『日本製鋼所技報』第75号, 44-50. PDF
