射出成形品の端が持ち上がる。基準面に置くと隙間ができる。組付け時に位置が合わない。
こうした反りが見つかったとき、冷却時間を延ばすのか、金型温度を変えるのか、保圧を確認するのか迷います。条件を変える前に、まず反り量を同じ測定条件で比べられるようにし、変更した成形条件と測定結果を一つの試行データとしてExcelなどに記録します。
PP(ポリプロピレン)製の薄肉カバーを例に、冷却時間だけを変えた4試行を比べます。反り量、重要寸法、外観、離型状態、サイクル時間を確認しながら、次に試す成形条件を決めていきます。
この記事は、こんな方におすすめです
- 射出成形の試作、立上げ、量産で、成形品の反りを見ながら条件を調整している方
- 冷却時間、金型温度、保圧のどこから確認するか迷っている方
- 反り量、寸法、外観、サイクル時間をExcelなどに記録し、次に試す成形条件を決めたい方
この記事で分かること
- 異なる成形条件で測った反り量を比べるために、測定位置、測定方向、測定時点をどうそろえるか
- 冷却時間など一つの成形条件を変えたとき、反り量、寸法、外観、離型状態、サイクル時間をどう記録して比べるか
- 反り量の改善幅が小さくなったとき、どの測定結果を見て次に試す成形条件を決めるか
- 反りが目標に届かないときや、条件を変えても反り量の変化が小さいとき、ゲート位置、冷却状態、材料について何を確認するか
- 試行数が増えたとき、まだ試していない成形条件の結果を予測し、次に試す成形条件を絞る考え方
先に答え
本文の冷却時間、反り量、寸法、サイクル時間は、成形条件と測定結果の比べ方を説明するための架空値です。
測定・記録
反り量を比べるために、測定条件と記録項目をそろえる
冷却時間や金型温度を変える前に、まず「何を反り量として測るか」を決めます。
たとえば、成形品を毎回同じ向きで基準面に置き、同じ測定位置で、基準面から最も離れた位置までの距離を測ります。この例では、その距離を最大反り量として扱います。製品図面や社内の検査基準で測定位置や測定方法が決まっている場合は、その基準を使います。
測定時点もそろえます。離型直後の値と成形後30分の値が混ざると、同じ条件で成形した製品でも比較の前提が変わります。Excelなどの表に「いつ測った値か」を記録し、同じ測定時点の値同士を比べます。
ねじれのように変形が複雑な場合は、一つの最大反り量だけでは形状全体を表せないことがあります。その場合は、品質管理で重要な複数の測定位置や方向を決め、それぞれの値を記録します。
成形条件を比べるときは、測定結果だけでなく、どの製品、金型、材料で試したかも記録します。たとえば、次の項目です。
- 製品図番、改訂番号
- 金型番号、キャビティ番号
- 材料名、グレード、材料ロット
- 変更した成形条件とその設定値
- 最大反り量、重要寸法、外観、離型状態、サイクル時間
- 測定時点
Excelなどの表では、一つの試行を一行にまとめます。各行を見れば「どの成形条件を変え、そのとき何を測定したか」が分かる状態にしてから、試行同士を比べます。
次に、この記録方法を使って、冷却時間だけを変えた4試行を比べます。
比較例
冷却時間だけを変えた4試行で、反り量と寸法を比べる
一つの成形条件の違いを単純に比べる例として、同じ製品仕様、同じ金型、同じキャビティ、同じ材料ロットで成形し、冷却時間だけを変えた4試行を用意します。
以下、この4試行をC1、C2、C3、C4とします。
金型温度、樹脂温度、射出速度、V/P切替条件(射出から保圧へ切り替える条件)、保圧圧力、保圧時間は同じ設定です。
目標値:最大反り量0.50 mm以下、重要寸法100.00 ± 0.15 mm、外観合格。
表1 冷却時間だけを変えた4試行
| 試行 | 変更条件 | 測定結果 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 試行 | 冷却時間 s |
最大反り量 mm |
重要寸法 mm |
外観 | 離型状態 | サイクル時間 s |
| C1 | 10 | 1.10 | 100.28 | 合格 | 端部に軽い擦れ | 25 |
| C2 | 14 | 0.72 | 100.16 | 合格 | 合格 | 29 |
| C3 | 18 | 0.60 | 100.10 | 合格 | 合格 | 33 |
| C4 | 22 | 0.58 | 100.09 | 合格 | 合格 | 37 |
C1からC2では、冷却時間を10 sから14 sへ延ばすと、最大反り量は1.10 mmから0.72 mmへ0.38 mm小さくなっています。C2からC3では、最大反り量は0.72 mmから0.60 mmへ0.12 mm小さくなっています。
C3からC4では、冷却時間を18 sから22 sへ4 s延ばしても、最大反り量の差は0.02 mmです。重要寸法はC3、C4とも許容範囲に入っていますが、最大反り量はどちらも0.50 mm以下という目標に届いていません。サイクル時間は33 sから37 sへ4 s長くなっています。
C4の反り量は4試行で最も小さくなりました。次も冷却時間を延ばせばよいのでしょうか。
冷却時間を延ばすほど、改善幅が小さくなった研究例
Kleinsorgeらは、PP製ハウジングを対象に、保圧終了後に設定した冷却時間(論文中のpost-packing cooling time)や金型温度などを変え、離型時温度、寸法、角度変化を測定しました。未使用原料のPP(バージンPP)を使った試験では、冷却時間を長くすると寸法偏差や反りを示す角度変化が小さくなり、冷却時間を延ばすほど改善幅は小さくなりました。PCR PP(使用後に回収された材料を再生したポリプロピレン)を使った別の試験では、金型温度による違いも確認されています。[1]
簡単に言うと、Kleinsorgeらは、冷却時間や金型温度を変えて成形し、成形品の寸法や反りに関係する角度変化を測定しました。バージンPPでは、冷却時間を長くすると寸法偏差や角度変化は小さくなりましたが、冷却時間を延ばすほど改善幅は小さくなりました。PCR PPでは、金型温度によっても結果が変わりました。この研究例からは、冷却時間を延ばしたときの改善幅だけでなく、金型温度による違いも一緒に確認していることが分かります。
表1のC3とC4では、最大反り量だけでなく、重要寸法とサイクル時間も比べます。反り量は0.02 mm小さくなる一方、サイクル時間は4 s長くなっています。次の試行では、この差と目標値との距離を見て、冷却時間をさらに延ばすか、別の成形条件を試すかを検討します。
次の試行
C3とC4の結果から、次に変える成形条件を決める
C3とC4は、重要寸法がともに許容範囲内で、外観と離型状態も合格です。一方、最大反り量は0.60 mmと0.58 mmで、どちらも0.50 mm以下という目標には届いていません。
冷却時間を18 sから22 sへ延ばしたときの反り量の差は0.02 mm、サイクル時間の差は4 sです。C3からC4では、冷却時間を4 s延ばしたのに対し、反り量は0.02 mmしか小さくなっていません。
次に試す成形条件として、たとえば次の2つが考えられます。
- 冷却時間をさらに延ばし、反り量、重要寸法、サイクル時間がどう変わるかを確認する
- 金型温度など別の成形条件を一つ変え、反り量、重要寸法、外観、離型状態、サイクル時間を測る
どの成形条件を次に変えるかは、製品の目標値、許容範囲、サイクル時間などを見て決めます。新しい試行では、今回確認したい成形条件を一つ決め、測定結果をExcelなどの表へ新しい一行として追加します。
保圧時間や保圧力を詳しく切り分けて確認する場合は、「射出成形の保圧、どう決める?保圧時間と保圧力、重量と寸法の見方」で、保圧時間と保圧力を分けて試す考え方を説明しています。
確認先
成形条件を変えても反りが改善しないとき、何を確認する?
冷却時間や金型温度などを変えても最大反り量が目標に届かない場合や、条件を変えても反り量の変化が小さい場合は、成形条件の設定値だけでなく、ゲート位置、流動方向、冷却状態、材料についても確認します。
ゲート位置、流動方向、繊維配向
Michiiらは、短ガラス繊維を含むリブ付き平板で、繊維配向(樹脂中の繊維が向く方向)と反りを調べました。平板部とリブ部の繊維配向差に由来する収縮率差が、反り量の増加に関係していると報告しています。また、サイドゲートを使った条件では、最大変形位置がゲート側へ移っています。[2]
Huszarらは、数値解析でPP、PS(ポリスチレン)、30%繊維充填PPと4つのゲート位置を比較しました。繊維充填PPではゲート位置による反りの変化が大きく、ゲート位置によって溶融樹脂の流れ方と繊維配向分布が変化しました。さらに、繊維充填PPについて中央部と上部の2つのゲート位置で実験成形を行い、数値解析で確認した変形傾向と比較しています。[3]
繊維強化材を対象とした2つの研究では、ゲート位置や樹脂の流れ方、繊維配向の違いによって、反りの大きさや大きく変形する位置が変わることが報告されています。簡単に言うと、ゲート位置が変わると樹脂の流れ方が変わり、それに伴って繊維の向きも変わります。したがって、繊維強化材の反りを比べるときは、成形条件だけでなく、ゲート位置や樹脂が流れる方向も一緒に確認すると、反りの違いを考えやすくなります。
C1〜C4のような試行表で繊維強化材を扱う場合は、ゲート位置と主な流動方向の列も設けておくと、反りが大きい方向との位置関係を後から確認できます。成形条件の変更だけでは説明しにくい場合に、追加で確認する項目を考える材料になります。
金型内の冷却状態
東レのナイロン技術資料では、成形品の各部分で冷え方に差があると、場所によって収縮量に差が生じ、その差が歪みにつながると説明しています。[4]
この技術資料はナイロンを対象としたものです。反り量がキャビティや製品の部位によって異なる場合は、設定した金型温度に加えて、各部分の冷え方に違いがないかも確認する必要がありそうです。
材料グレード、材料ロット、繊維の有無
過去の試行と比べるときは、材料グレード、材料ロット、繊維の有無や含有率が同じかを確認します。
冷却時間だけを比べる場合、C1〜C4の材料ロット欄には同じロット番号を記録します。材料ロットの違いを比較する場合は、比較したいロット以外の主要な成形条件をそろえ、各試行の材料ロット欄に異なるロット番号を記録します。
材料ロット変更時の確認方法は、「再生材のロットが変わった。射出成形品の何を確認する?材料ロット変更時の比較と成形条件の見直し」で詳しく扱っています。
データ活用
成形条件と測定結果が増えたら、未実施条件の結果を予測する
C1〜C4のように、変更する成形条件が冷却時間だけで、試行数も少ないうちは、Excelなどの表を見ながら次の条件を考えられます。
一方、冷却時間、金型温度、樹脂温度、射出速度、保圧条件など、変える条件が増えると、条件の組み合わせも増えていきます。さらに、反り量、重要寸法、重量、外観、サイクル時間など、確認する結果も増えます。そのため、まだ試していない一つひとつの成形条件について、「この条件なら反り量や寸法はどのくらいになりそうか」を検討する作業が増えていきます。
こうした過去データから未実施条件の結果を予測する方法の一つが機械学習です。過去に試した成形条件と、その条件で測った結果の関係をコンピューターに学習させます。そして学習した関係を使って、成形条件を入力すると結果の予測値を出す仕組みを、ここでは「予測モデル」と呼びます。予測モデルへ未実施の成形条件を入力すると、その条件で得られる結果を予測できます。
Leeらは、射出成形の工程条件と製品形状を入力し、製品重量を予測する機械学習モデルを構築しました。多数の未実施条件について重量を予測し、目標重量に入る成形条件を抽出したうえで、再シミュレーションや再実験で確認しています。[5]
Leeらが予測した結果項目は製品重量です。未実施条件の重量を予測して、試す条件を絞り、最後に再実験で結果を確認しています。
過去の射出成形データを次の条件出しへ使う基本的な考え方は、「射出成形の過去データを次の条件出しにどう使う?成形条件と品質結果の比べ方」で詳しく説明しています。
まとめ
反り量を測り、成形条件と測定結果を一行で比べる
- 基準面、測定位置、測定方向、測定時点をそろえる
- 一つの成形条件の違いを比べる場合は、今回変更する条件を一つ決め、他の主要条件を同じ設定にする
- Excelなどの表で、変更した成形条件と、反り量、重要寸法、外観、離型状態、サイクル時間を1試行1行に記録する
- 反り量を目標値と比べ、重要寸法が許容範囲に入っているか、外観、離型状態、サイクル時間がどう変わったかも確認する
- その結果から次に試す成形条件を決め、必要に応じてゲート位置、流動方向、冷却状態、材料についても確認する
ある成形条件を変えた後に反り量が小さくなっても、1回の結果だけで原因が分かったとは判断せず、追加成形の結果も同じ表へ記録し、実測値を増やしながら次の条件を決めます。
次のステップ
試行データが増えたとき、UIDCSで次に試す成形条件を探す
C1〜C4程度であれば、Excelなどの表を見ながら次の条件を考えられます。冷却時間、金型温度、樹脂温度、射出速度、保圧条件と、反り量、寸法、重量、サイクル時間の組み合わせが増えると、未実施条件を一つずつ検討する作業も増えます。
シムロンでは、こうして蓄積した成形条件と測定結果のデータから、欲しい結果に近い成形条件を探すUIDCS(逆設計・条件探索プラットフォーム)を開発しています。
UIDCSでは、過去データの「条件」と「結果」の関係を機械学習で学び、条件を入力すると結果を予測するモデルを作ります。そして、ユーザーが目標とする結果を設定(入力)すると、まだ試していない条件も含めて結果を予測し、目標に近い成形条件の候補を結果として出力します。
- 過去データの成形条件:冷却時間、金型温度、樹脂温度、射出速度、保圧条件など
- 過去データの測定結果:反り量、重要寸法、重量、サイクル時間など
- ユーザーが設定する目標:反り量、寸法、サイクル時間などについて目指す値や範囲
- UIDCSから得るもの:成形条件の候補、各候補の予測結果、設定した目標との差
C1〜C4を含む試行データがさらに蓄積した場合の説明例
(以下の0.50 mm、100.00 ± 0.15 mmは、本文のC1〜C4と同じ説明用の目標値です)
- 予測モデルに入力する成形条件:冷却時間、金型温度、樹脂温度、射出速度、保圧条件
- 予測する測定結果:反り量、重要寸法、重量、サイクル時間
- 設定する目標の例:反り量0.50 mm以下、重要寸法100.00 ± 0.15 mm、サイクル時間の上限
- 比較する内容:次に試す成形条件の候補、各候補の予測結果、設定した目標との差
複数の成形条件の候補について、予測した反り量、寸法、サイクル時間を一覧で確認し比較できれば、未実施条件を一つずつ表から検討する手間が減り、次に実成形する条件が選びやすくなります。
UIDCSでは、まだ試していない成形条件について、反り量や寸法などの結果を予測します。複数の成形条件について予測結果を確認し、その中から次に試す条件を検討できます。予測結果は過去に使ったデータの範囲や品質に影響されます。最後は実際に成形して反り量や寸法を測り、結果を確かめます。
欲しい結果から、条件を探す。
UIDCSは現在開発中です。紹介ページでは、手元の条件と結果のデータから未実施条件の結果を予測し、目標に近い成形条件の候補を比較する基本的な流れを紹介しています。
References
参考文献・技術資料
- Kleinsorge, J.; Ollig-Gaul, Y. L.; Hopmann, C., “Effect of Cooling Time on Demoulding Temperature, Shrinkage and Warpage of Injection-Moulded Polypropylene Parts,” Polymers, 18(15), 1852, 2026. DOI: 10.3390/polym18151852. Publisher page
- Michii, T.; Seto, M.; Yamabe, M.; Otsuka, H., “Warpage Mechanism due to Fiber Orientation during Injection Molding,” Seikei-Kakou, 16(7), 467–473, 2004. DOI: 10.4325/seikeikakou.16.467. J-STAGE
- Huszar, M.; Belblidia, F.; Davies, H. M.; Arnold, C.; Bould, D.; Sienz, J., “Sustainable injection moulding: The impact of materials selection and gate location on part warpage and injection pressure,” Sustainable Materials and Technologies, 5, 1–8, 2015. DOI: 10.1016/j.susmat.2015.07.001. Swansea University Repository
- Toray Industries, Inc., 「金型」, ナイロン樹脂 アミラン™ テクニカル情報. 東レ公式技術資料
- Lee, C. et al., “Development of Artificial Neural Network System to Recommend Process Conditions of Injection Molding for Various Geometries,” Advanced Intelligent Systems, 2(10), 2000037, 2020. DOI: 10.1002/aisy.202000037. Publisher page
